5社それぞれが、独自の色を打ち出していた点がまず興味深いポイントだった。こちらでどの会社に相談しているのかを伏せているのにも関わらず、ネットのPV数が他社よりも多い、地元の見込み顧客をおさえている、手数料の仕組みが違うなど、独自色を打ち出していた。その上で、それぞれの営業担当者が信用できそうかという勝負になるのだが、各社とも会社の強みだけでなく、各個人のタイプの違いもあり、どこにお願いするのかには悩んだ。A社に決めたのは、ネットに強いこと、写真撮影のためにハウスクリーニングをしてくれる上、レイアウトまで提案してくれること、さらには営業担当者が何度も社内表彰されたことのあるベテランで、しかも安心できる人だったからだ。
ご存知のとおり、売却を決断した瞬間に新型コロナウイルスショックが直撃した。しかし、営業担当者は「必ず売れます」と断言してくれた。投資のための物件ではないため、住みたい人のための需要があるからだ。築15年だが、間取りや設備など物件としての魅力も大きいと語ってくれた。さすがに、緊急事態宣言が発令されてからは、物件のPV数も落ち込んだが、解除になる前後から問い合わせが入り、二組目の内覧者の方への売却が決まった。良い縁に感謝している。感動した。
私自身、新型コロナウイルスショックに対して、極力冷静になるようにしていたが、少なくとも私生活においては、やや動揺していたのだろう。物件には魅力があったし、ニーズはあった。
フランス車は想定外だった
以前、人生における2台目のクルマを購入した際の営業担当者も、シビレる営業だった。それまでドイツ車に乗っていた私にとって、フランス車はまったくの想定外だった。なんせ、壊れやすいのではないかというイメージを抱いていた。興味本位で、話を少し聞くだけというくらいの軽い気持ちで資料請求をした。しかし、彼は私のフランス車に対する誤解を一つ一つ丁寧にといていった。さらに、私のライフスタイルをヒアリングし、「このクルマならホテルの前でも、山でもかっこいいですよ」という決めセリフを発したのだった。不安を解消し、納得感を高める営業だった。結局、その後に買い替えた1台も含め、10年近くフランス車に乗った。
営業担当者以外の方なら、逆にビジネスの場において他社の営業を受けることがあるだろう。これもまた、学びの場である。どのような価値を提供するか、どうすれば納得感が得られるか、どのようなトークでプレゼンするのか。「いや、私、営業じゃないし」というあなたは甘い。これもまたサラリーマンの人生訓で「すべての仕事は営業である」というものがある。実際にモノを売るという仕事をするわけではなくても、何か価値を提供し、納得してもらうという点は変わらない。自分がどんな価値を提供しているのか。考えてみよう。
【働き方ラボ】は働き方評論家の常見陽平さんが「仕事・キャリア」をテーマに、上昇志向のビジネスパーソンが今の時代を生き抜くために必要な知識やテクニックを紹介する連載コラムです。更新は原則隔週木曜日。アーカイブはこちら