仕事で使えるAIリテラシー

AIを導入したら忙しくなった 生産性が向上しない「あるある」な原因 (1/2ページ)

高田朋貴
高田朋貴

 AI(人工知能)の開発サービスを提供しております、株式会社SIGNATEの高田朋貴と申します。AIを開発・運用するために必要な人材の条件や、AIを適切に活用していくためにビジネスパーソンが身につけるべきリテラシーについて紹介していく本連載。第5回は、せっかくAIを導入しても、思ったように生産性が向上しないケースについて説明させていただきます。

 ユーザー不在の開発が招く失敗

 この連載でも何度かお話してきたように、日本企業がAIを導入するメリットの1つは、労働人口が減少していく中で、AIをうまく活用すれば、生産性を向上させることができる点にあります。「人間の仕事をAIが奪う」のではなく、人間には本来は不向きだけど、機械なら得意な作業をやってもらう。人間とAIがコラボレートすることで、限られた人員で今まで以上に効率的に業務を回していくことができると期待されているのです。

 しかし、いざAIを導入してみたら、業務の効率化どころか、むしろ以前よりも業務量が増えてしまった。そんなケースがビジネスの現場では少なくありません。なぜ、そんなことが起こるのでしょう? さまざまな原因が考えられますが、もっとも「あるある」なものとしては、「ユーザー不在なまま開発してしまった」ことが挙げられます。ここで言う「ユーザー」とは、消費者ではなく、「現場でAIを使って作業を行う人」です。

 この「ユーザー」を決して置いてきぼりにしない。それは弊社でAI開発の受託案件を引き受けさせていただくとき、必ず気を付けるようにしていることでもあります。具体例を引いて説明しましょう。

 一見便利なAIが「使えない」ものに

 例えば製造業の会社が、工場のラインで使う機械の故障を自動検知するAIを作ったとします。センサーやカメラによって動作不良を察知し、「そろそろ故障しそうです」とアラートを出してくれるアルゴリズムです。一見、非常に便利なAIに思えます。しかし、実はこのAIは「このままでは使えない」ものでした。

 「そろそろ故障しそうです」とアラートを出す。これ自体は便利な機能です。だからこそ経営陣も導入を決めたのでしょう。しかし現場にとって重要なのは、「どこを直せばいいのかわかる」こと。このAIは、作業機械が普段と違う動き方をしていると、「異常あり」と判断してアラートを出します。しかし、肝心の「どこがどう悪いのか」と教えてくれる機能は実装されていませんでした。だから、現場の作業量が減ることはなく、現実には使えないAIとなってしまったのです。

 このお話を聞いて、「どうしてそんな単純なことに開発の段階で気が付かなかったのか?」と思うかもしれません。その理由はまさに「ユーザー不在で開発プロジェクトを進めてしまった」ことにあります。要するに、現場よりも上のレイヤーだけで、「こういうAIがあったら便利に違いない」とプロジェクトを進めてしまい、「実際の作業フローに組み込んだらどうか」という検証がないまま導入してしまったのです。

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