働き方

就活悲痛 「売り手市場」暗転、コロナで潮目変化

 2021年春卒業予定の大学生・大学院生向けの求人数が昨年に比べ15.1%減少した。人手不足や緩やかな景気回復を背景に15年ごろから続いてきた学生優位の「売り手市場」は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて潮目が変わった格好だ。「こんなはずじゃなかった」。内定が得られず焦りを募らせる就活生らから、悲痛な声が上がる。

 「コロナの影響をかなり受けている」。東洋大4年の男子学生(22)は就活環境の厳しさを訴える。

 志望する映像制作の業界に絞って就職活動してきたが、複数企業の選考に落ち、採用の取りやめにも遭った。内定はまだ得られておらず、最終選考に至った1社の8月の面接に望みをかける。「もし落ちたら、秋以降も受け続けるしかない」

 影響が及ぶのは、内定を得ていない就活生にとどまらない。卒業後に定職に就いていなかった既卒者や、1社目の就職先を短期間で辞めてしまった「第二新卒」らの就職・転職支援サービス業「UZUZ(ウズウズ)」には「4月の入社直前に内定を取り消された」「入社後に休業が続き、月10万円弱しかもらえず生活できない」といった相談が相次いでいるという。川畑翔太郎専務取締役は「IT関連の求人は徐々に戻りつつある一方、製造業では全く見つからない」と指摘する。

 厚生労働省によると、今春卒業で、コロナの影響で内定を取り消された大学生、高校生は100人超。既に21年卒業予定者でも一部で取り消し例が出ている。企業の採用支援を手掛ける「MyRefer(マイリファー)」の調査では、4人に1人の就活生が「複数社に内定承諾を出したい」と答え、取り消しリスクに備える意向があった。

 採用関係者は現在3年生の大学生らへの求人動向にも警戒感を隠さない。企業が新型コロナの影響を考慮に入れて採用計画を練り直すことが予想され、感染拡大が続けば一段の悪化が懸念されるためだ。

 法政大3年の女子学生(20)は夏に開かれるインターンシップ(就業体験)に参加しようと申し込んだが、結果は不合格。「インターンの参加者数が絞られ、採用も減らされるのではないか」と不安を募らせる。

 文化放送キャリアパートナーズ就職情報研究所の平野恵子所長は「売り手市場だった状況は変わった。学生らはどういう業種が新卒に力を入れているかといった企業の動向をよく見て、就職活動を進めることが大切だ」と話す。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus