働き方

フリーにぴったりの「ワーケーション最適県」 旅費と宿泊費は企業持ち

 旅行先で休暇を楽しみながら仕事にも取り組む「ワーケーション」の導入機運が高まる中、「自然が豊かでワーケーションに最適」と愛媛県を推す人がいる。同県今治市と東京を拠点にPRディレクターとして活動する楠橋明生(くすはし・あきお)さん(24)。都会の人材と愛媛の中小企業をマッチングする「iiwake.SHIGOTOTABI」を6月に立ち上げると、立て続けに2例が成約した。新型コロナウイルスの感染拡大で「新しい生活様式」も求められており、楠橋さんは、新しい形の働き方を提示したいと意欲を見せている。

 人材を生かす

 ワーケーションは2000年代に米国で使われ始めた言葉で「ワーク」と「バケーション」を組み合わせた造語。インターネット社会の進展により、観光地やリゾート地でも、パソコンを持っていけば仕事ができるイメージを表している。

 楠橋さんは、東京や大阪などの都会にいる若手のクリエイターを愛媛県の中小企業に紹介し、地元で宿泊しながら仕事をしてもらうことを志向し、iiwake.SHIGOTOTABIを立ち上げ。職種はライター▽写真▽映像▽ホームページ作成▽企業PR▽プランニング▽経営コンサルタント-などで、対象はフリーランスか副業を認めている企業の会社員を想定している。

 楠橋さんによると、人材が集中する都会での仕事は、高収入ではあるが、忙しく多人数がかかわることから、自分の立ち位置や仕事の成果をなかなか確認しづらい。才能のあるクリエーターも次第に疲弊し「たまには息抜きしてみたい」と考えるようになるという。

 一方、地方には魅力のある中小企業も多い。

 戦略PRコンサルティングなどを行う「ako(エーケーオー)」代表でもある楠橋さんは、同県今治市と西条市でウェブマガジンを制作する仕事もしており、地元企業の社長に課題を聞く機会があった。そこで「地方の企業には人を探すとき選択肢が少ない。地元にも人材はいるが、なあなあになってしまうことがある」と感じた。そうしたこともあり、「経験値が高く、クリエイティブな仕事をしている人を紹介できたら」と考えたのだという。

 価値観の変化

 新型コロナウイルスの影響で経済が停滞し、フリーランスの仕事は激減している。楠橋さんが提示するワーケーションの形は、そのような若い人材にとって魅力的かもしれない。

 報酬は都会より抑えられることになりそうだが、その代わり旅費と宿泊費は企業側が持つ。「2、3年前なら乗ってこなかったと思います」と楠橋さん。

 だが今年7月上旬、さっそく1例目が実現した。東京でCM撮影をしている25歳の男性を、今治市の発光ダイオード(LED)照明器具の製造販売会社に紹介。男性は滞在中、商品の展示会で使う動画を撮影した。2例目は東京のライター。4日間滞在し、西条市の人材会社の仕事としてIT企業を取材した。

 「コロナ禍によって地方への憧れが強まり、テレワークや副業を解禁する企業も増えた」。ワーケーションに追い風を感じている楠橋さん。人材の面では「若い人の価値観は『モノ消費』から『コト消費』へと変わってきている」と指摘し、受け入れる企業側では「大事なのは『外の目線』。地元としがらみのない都会の人だからこそできる仕事がある」と訴える。ワーケーションは双方にとってメリットのある「ウィンウィン」の関係をつくることができそうだ。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus