社会・その他

アプリ「テレグラム」悪用進むが規制難しく… “アナログ”手段で包囲網

 送受信した文章や画像が一定の時間を経過すると自動消去される無料通信アプリ「テレグラム」が、特殊詐欺や強盗などの犯罪グループ内で悪用されるケースが栃木県内で増加している。やりとりの履歴が残らないため、グループの一部を摘発しても、捜査当局はメンバーをたどれないことが多く、全容解明の壁となる。現状ではテレグラムの法規制も難しく、県警は全国の警察との情報共有強化という“アナログ”な手段で、犯罪グループの包囲網を敷く。(根本和哉)

 復元は困難

 今年2月、宇都宮市の会社役員の男性(47)の住宅兼事務所に強盗グループが侵入し、居合わせた社員の男性(29)を殴って現金や商品券など計約240万円相当を奪った事件が発生した。強盗容疑で6~8月に県警が逮捕した実行役7人と指示役3人の連絡手段は、ロシア製無料通信アプリ「テレグラム」だった。

 インターネット上にあった高額報酬をうたう闇バイト募集で集められた実行役たち。指示役はテレグラムを通じて犯行場所や方法などを細かく指示していた。

 テレグラムの最大の特徴は、設定した時間が経過すると、テレグラムを通して送受信した文章や画像の履歴が自動消去されること。その上、消去された履歴の復元は難しいという。今回の事件でもこの仕組みが悪用され、県警は先に逮捕した実行役と指示役をつなぐ情報の収集に苦労した。

 強盗事件だけでなく、特殊詐欺事件の「受け子」への指示にも用いられているテレグラム。県警捜査2課によると、かつては履歴が残る無料通信アプリ「LINE(ライン)」などの利用が主流だったが、状況はここ2年ほどで一変。現在、県内で発生する特殊詐欺のほぼ全てでテレグラムが利用されており、捜査当局は頭を悩ませている。

 民主国家の法規制

 韓国社会を震撼(しんかん)させたデジタル性犯罪事件、通称「n番部屋事件」でも、テレグラム上に設けられたチャットルームが悪用されたことが話題になった。世界的に悪用が横行するアプリならば、各国が法規制すればいいのではないか。実際に中国やイランなど、世界にはテレグラムの使用が禁止されている国も存在する。しかし、日本での法規制に専門家は慎重な考えを持っている。

 世界のインターネット規制に詳しい清泉女子大学の山本達也教授は「使用を禁止しているのは非民主主義体制の国家が中心」と指摘する。日本が禁止に踏み切れば「『インターネットの自由を脅かしている』と他の民主主義国家に捉えられかねない」(山本教授)という。

 法規制がない中、県警は全国の警察と積極的に情報共有するといういわば“アナログ”な手段で、犯罪グループを追い詰めようとしている。闇バイト募集を通じて集まった強盗や特殊詐欺グループは、県をまたいで複数の犯罪に手を染めていることも多く、幅広い情報共有がカギを握る。

 2月の事件では、指示役が闇バイトの募集で用いたツイッターアカウントが発見され人物は特定できたものの、潜伏先が不明だった。しかし、3人の指示役のうち2人が、別の強盗事件を起こして警視庁に逮捕されていたことが情報共有によって判明し、県警も立件にこぎ着けた。捜査関係者は「今は県内だけで犯罪を行う例は少ない。犯人を逮捕したら、その情報が即座に全国の警察で共有されるようになっている」と話す。

 また、テレグラムをダウンロードさせないことも重要だ。捜査関係者は「テレグラムを通じて指示されるということは、捜査が及んだ場合に使い捨てにされるということを意味する。実行役が『指示されてやった』ということを証明しづらくなる」と、安易なダウンロードに警鐘を鳴らしている。

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