ミラノの創作系男子たち

絹織物の産地で育んだ夢 アーティストとアルティザンのバッグに挑む~女子編 (3/3ページ)

安西洋之
安西洋之

 インドの人たちと仕事していて苦労はあるのだろうか。

 「言うまでもなく文化ギャップはあるけど、違う考え方に出逢うのって面白いじゃない。だってそれで私も学べるのよ。しかも、相手はアーティストやアルティザンなのだから、私が夢中にならない方がおかしいくらい」と笑う。

 モノが良いかどうかの判断は文化圏によって異なる。ラグジュアリーであるかどうかの認知は特にそうだ。よってジュリアはそうした違いを大学でも徹底して学んでいるが、この異文化理解の仕方を自らが講師になってインドの従業員に教えていこうと考えている。

 それでは最後の質問だ。今、進めているバッグのプロジェクトの準備をしながら、何を感じ、考えているのだろうか。

 「とっても興味深い質問だわ。ちょっと感情が入り混じっていると言えばいいかしら。たいていの時は、市場に早く出したくてうずうずしているの。お客さんからの反応を受け取り、自らのクリエイティビティをフル稼働させたいって。でも、とっても不安になり、これから何が起こるだろうって心配にも時になるの、特に今のようにパンデミックで全てがどうなるか見えないとね。とっても大事なのよ、このプロジェクトは。だって子どもの時から思い描いていたラインなのよ。だからこれがどうなろうと、私は決して諦めないつもり!」

 この困難な時期だからこそ、小さな時からの夢を叶えられる幸運を手に入れることを祈るばかりだ。

安西洋之(あんざい・ひろゆき)
安西洋之(あんざい・ひろゆき) モバイルクルーズ株式会社代表取締役
De-Tales ltdデイレクター
ミラノと東京を拠点にビジネスプランナーとして活動。異文化理解とデザインを連携させたローカリゼーションマップ主宰。特に、2017年より「意味のイノベーション」のエヴァンゲリスト的活動を行い、ローカリゼーションと「意味のイノベーション」の結合を図っている。書籍に『「メイド・イン・イタリー」はなぜ強いのか?:世界を魅了する<意味>の戦略的デザイン』『イタリアで福島は』『世界の中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』。共著に『デザインの次に来るもの』『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか?世界で売れる商品の異文化対応力』。監修にロベルト・ベルガンティ『突破するデザイン』。
Twitter:@anzaih
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ローカリゼーションマップとは?
異文化市場を短期間で理解すると共に、コンテクストの構築にも貢献するアプローチ。

ミラノの創作系男子たち】はイタリア在住歴の長い安西洋之さんが、ミラノを拠点に活躍する世界各国のクリエイターの働き方や人生観を紹介する連載コラムです。更新は原則第2水曜日。アーカイブはこちらから。安西さんはSankeiBizで別のコラム【ローカリゼーションマップ】も連載中です。

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