社会・その他

日本郵便格差訴訟 労働実態を重視も…難しい画一的判断

 日本郵便の契約社員をめぐる15日の最高裁判決は、正社員との手当や休暇の格差を「不合理」とし、非正規労働者に救済の道を開いた。とりわけ多くの企業が導入する扶養手当の支払いを最高裁が認めたのは初めてで、判決が他の企業に影響する可能性がある。一方で、13日に判決があった2件の格差訴訟では、退職金とボーナス(賞与)の請求を退けており、画一的な判断の難しさを印象付けた。

 最高裁は、日本郵便の扶養手当の目的を「長期の継続勤務が期待される正社員の生活保障や福利厚生を図り、継続的な雇用を確保するため」と指摘。ただ、同社には6カ月以内や1年以内の契約で更新を繰り返す契約社員も多く、原告らは継続的な勤務が見込まれるとして「扶養手当の相違は不合理」と結論付けた。

 一方、東京メトロ子会社「メトロコマース」と大阪医科大に非正規側が退職金や賞与を求めた13日の最高裁判決では、原告側敗訴の判断が出た。結論が割れた要因の一つには、退職金や賞与の支給目的の幅広さがあるだろう。

 退職金や賞与の算定には通常、個人の能力評価や勤続期間、業績などが加味されるが、どう反映するかは会社によってまちまちで、支給の目的も複合的とされる。2審は一定期間の勤務に対する功労金といった性格などを重視して非正規への支払いを認めたが、13日の判決は「正社員としての職務を遂行しうる人材の確保や定着を図る目的」と経営側の主張に理解を示し、2審の判断を覆した。

 これに対し、日本郵政の手当は目的が比較的明確で、最高裁は扶養手当を「継続的な雇用の確保」、夏期・冬期休暇は「心身の回復」と定義。特に年末年始勤務手当は年賀状配達という「最繁忙期の業務への対価」と位置付け、いずれも能力や責任の度合いを目的に含めなかった。

 ただ、一連の判決で決着したわけではなく、同じ手当でも別の条件下では結論が変わる可能性が大いにある。「同一労働同一賃金」制度では、企業側は労働者が求めた場合に待遇差の理由を説明する義務を負う。各企業は法の趣旨と現場の実情を踏まえ、公平で透明性の高い人事制度の検討が求められる。

(加藤園子)

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