社会・その他

“幻のトンネル”から見る日本の土木技術の底力 日本遺産認定きっかけに注目 (2/2ページ)

 深礎工の設置では、地面に垂直に穴を掘り進め、底までたどり着くと今度は下方からコンクリートを打ち付けていく。「大型機械は入らないため、小型シャベルと作業員による掘削機で掘り進めます。土はバケツに入れてタワークレーンで搬出する地道な作業。1本を造るのに2~3年がかかった」という。

 また、地下水も工事を阻んだ。近くを流れる大和川の水位よりも深く掘り進めると、しみ出す量も増える。このため地下水が穴に流れ込まないように土に止水材を注入し、壁面を固めながら慎重に掘る必要があったといい、同事務所の榎本博行副所長は「安全確保が必要で、相当な労力を費やしたはず」と指摘する。

 同時に地下水を抜き取る排水トンネルの設置も進められ、7本、総延長約7キロが張り巡らされている。昭和初期の崩壊から、長く存在すら忘れられていた旧大阪鉄道亀瀬隧道は、この排水トンネルの掘削中に見つかった。

 日本遺産認定きっかけに注目

 かつて人々を脅かした地滑りが今、観光資源として注目され始めている。隧道を含む周辺地域の歴史遺産が「もう、すべらせない!! ~龍田古道の心臓部『亀の瀬』を越えてゆけ~」として日本遺産に認定されたことがきっかけだ。

 今年6月の認定以来、「亀の瀬地すべり歴史資料室」や隧道の見学希望者が急増しており、管理する大和川河川事務所は、隧道の公開を、これまで年に数回に限定していたのを、7月から実験的に毎週末に実施している。すでに9月までの3カ月で400人超の来訪者があったという。

 「近年社会的課題となっている自然災害と、人々が向き合ってきた要素を盛り込んだことが、日本遺産認定の後押しにつながった」

 日本遺産申請に携わった柏原市立歴史資料館の安村俊史館長もこう強調する。実は、柏原市と奈良県三郷町は昨年、古代の要衝「龍田古道」にまつわる文化財や信仰の歴史を前面にアピールして日本遺産申請を行ったが落選。昨年度までに80ほど認定されていた日本遺産には「街道」「古道」といった道に関する事例が多いことから、再挑戦にあたり、他と差別化できる特色として盛り込んだのが地滑りだった。

 柏原市産業振興課の田中明彦係長は「これまで柏原観光といえばブドウ狩り一辺倒だった。地滑りの亀の瀬を新しい観光資源として育て、観光客を呼び込みたい」と期待する。自然災害と向き合い続けた地域の歴史が今、動き始めている。

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