仕事で使えるAIリテラシー

日本企業が苦手な「脱自前主義」はAI開発にも欠かせない (1/2ページ)

高田朋貴
高田朋貴

 AI(人工知能)の開発サービスを提供しております、株式会社SIGNATEの高田朋貴と申します。AIを開発・運用するために必要な人材の条件や、AIを適切に活用していくためにビジネスパーソンが身につけるべきリテラシーについて紹介していく本連載。第7回目はAI開発のみならず、次世代の技術に対応できる企業経営を行っていくために欠かせない「脱自前主義」についてお話させていただきます。

 AIを自社だけで開発するのは非現実的

 AIの研究・開発では企業が保有するデータが鍵を握ります。ただ、いくら企業がデータを持っているからといっても、AIを開発する人材や技術といったリソースを、すべて自社で賄おうとするのは多くの場合、非現実的です。

 世界では企業同士がリソースを活用し合い、互いにwin-winとなるような関係を結ぶことで、AIの研究・開発のスピードを上げていくのが常識となりつつあります。

 しかし、日本企業の多くは未だ「自前主義」に囚われており、自社だけで技術開発を行おうとする傾向があります。

 弊社では定期的にAI開発のコンペティションを開催しています。約3万5000人に及ぶ登録会員のデータサイエンティストやAI技術者から参加者を募集して、クライアントの課題解決に資するアルゴリズムを開発してもらい、その精度を競ってもらう仕組みです。

 最終的には最も高い精度のアルゴリズムを開発した参加者から、懸賞金と引き換えに所有権を譲渡してもらいます。そうすることでAI開発のリソースに乏しい企業でも、効率的に精度の高いアルゴリズムを獲得できます。

 この場合、クライアントは弊社の登録会員に向けて自社のデータをオープンにすることが前提になるのですが、実は、それに抵抗感を示す企業が少なくありません。

 外部との協業に根強い抵抗感が残る日本企業

 もちろん、何でもオープンにすべきだと言いたいわけではありません。個人情報が含まれているなどの理由から、データの流出リスクに企業が敏感になるのは当然のことです。また、データを非公開で利用することで、明確な優位性や競争力が生まれているケースでは、データをオープンにしない戦略も十分に理解できます。

 しかし、こうした明確な理由に基づいて、データの公開に抵抗感を示すケースは決して多くはありません。私たちが日々のAI開発の現場で直面するのは、「自社の外にデータを出すのは、なんとなく嫌だから」といった感覚的なものがほとんどです。

 かつて日本企業、特にものづくり企業は、あらゆる技術開発を自社で担う「自前主義」で躍進を遂げてきました。狭い国内市場で激しい競争にさらされてきたため、「製品・サービスとそれを支える技術は自社で作るべきだ」という考え方が根強く残っています。それが会社の外にデータを出すことをためらわせる原因ともなっています。

 しかし、いまは「モノのインターネット化(IoT=Internet of Things)」が急速に広まっている時代です。さまざまなモノがネットワークでつながり、大量のデータがやり取りされるようになれば、分析ツールとしてのAIの重要性はますます高まります。つまり、IT以外の分野でもAI開発競争が激化していくのです。

 そうした中で自前主義にこだわりすぎると、他社に大きく出遅れてしまいます。自社に開発環境が整っていない企業なら投資もかさむでしょう。これはAI開発に限ったことではなく、新しいテクノロジーを活用しようとするあらゆる企業にいえることです。

 このような自前主義の弊害にいち早く気付いた一部の企業は、すでに他社と協力して製品や技術の開発を進める「脱自前主義」に舵を切っています。

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