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藤井棋聖に立ちはだかるラスボス達の君臨、秘策で挑むトップ棋士の面々 (1/2ページ)

 夏に将棋のタイトル「棋聖」と「王位」を相次いで獲得した藤井聡太棋聖(18)=王位=が9月以降、苦戦している。年度内に3つ目のタイトル挑戦の可能性があった王将戦では、挑戦者決定リーグ(王将リーグ)で3連敗し、挑戦の可能性が消えた。対戦相手は、豊島将之二冠(30)=竜王・叡王=や羽生善治九段(50)といった歴戦のトップ棋士たちで、対策を練られることもあり、厳しい戦いが続いた。敗戦の経験を今後のさらなる活躍の糧にできるか、高校生二冠が試練の秋を迎えている。(中島高幸)

 大棋士に初黒星

 9月22日に開幕した王将リーグは、7人のトップ棋士による総当たりで、渡辺明王将(36)=名人・棋王=への挑戦権を争う。7人中、成績下位の3人がリーグから陥落する。

 昨年の前期王将リーグで挑戦者まであと1勝まで迫った藤井棋聖。今期の初戦は羽生九段との対局だった。羽生九段は将棋界最多のタイトル99期といった大記録や永世称号を7つそろえた「永世七冠」の資格を持つスーパースターだが、過去4局の対戦では、藤井棋聖から白星を挙げることができなかった。

 リーグ初戦で羽生九段は「横歩取り」の戦型に誘導し、藤井棋聖が受けて立った。通算成績が8割以上と驚異的な勝率の藤井棋聖だが、激しい戦いになりやすいとされる横歩取りでの勝率は半分程度で、苦手なようだ。羽生九段の巧みな攻めに押し切られ、投了に追い込まれた。

 トップ棋士の藤井対策

 10月26日の王将リーグでは、ともに将棋を研究し合う永瀬拓矢王座(28)と対戦。今年、ヒューリック杯棋聖戦や王位戦の挑戦者決定戦という大一番で顔を合わせたが、いずれも藤井棋聖が勝利していた。

 この対局で後手番の永瀬王座が採用した戦型は、飛車を4筋に振る「四間飛車」だった。

 将棋の戦型は、飛車を定位置に構える「居飛車」と横に動かす「振り飛車」に大別される。棋士の多くが居飛車党で、藤井棋聖もその一人。振り飛車の将棋に対する勝率も高かった。

 居飛車中心の将棋を指していた永瀬王座が振り飛車の戦型で臨んだことに、藤井棋聖は意表を突かれたようだ。熱戦を制したのは永瀬王座だった。

 10月5日の対豊島戦での黒星を含め、王将リーグは3敗目となった。挑戦の可能性はなくなり、リーグ残留を目指すことになった藤井棋聖は対永瀬戦の終局後、「今期に関しては下を見る戦いになってしまったのは残念ですが、残留を目指して最後まで最善を尽くしたい」と話した。

 同29日に行われた王将リーグでも、居飛車党の佐藤天彦九段(32)が振り飛車を、同21日の順位戦B級2組の対局でも、村山慈明(やすあき)七段(36)が横歩取りをそれぞれ採用。藤井棋聖がいずれの対局も勝利したが、棋士たちも、対藤井戦に秘策をぶつけていることを強く印象付けた。

 勝ち負けはぎりぎり

 「ファンにとっては、高勝率だった藤井棋聖の負けが続くと驚くかもしれません。ですが、これまで勝ってこれたことがすごいことです」

 元「週刊将棋」編集長で大阪商業大学アミューズメント産業研究所の主任研究員、古作登さんがこう指摘する。

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