働き方

「就職氷河期」の再来回避に一丸 政府、内定率低下に対策急ぐ

 新型コロナウイルスの感染拡大は学生の就職活動を直撃し、これまで完全な売り手市場だった状況を激変させた。厚生労働省が発表した来春卒業予定の大学生の就職内定率は10月1日時点で7割を切った。顕著な影響は旅行業や航空業、飲食業など一部にとどまるとの見方はあるが、コロナの収束は見通せない。政府は「就職氷河期」の再来回避に懸命だ。

 コロナで一時中止

 千葉県に住む外国語大学4年の女子学生(21)は昨年1月から就活を始めて約30社を受けたが、まだ決まらない。大学で学んだ英語を生かせる海運業を目指したものの、5月ごろ採用を一時中止する連絡が相次いだ。例年と違う就活に戸惑った上、外出自粛中は友人との連絡も途絶えがち。再開への期待もあって他業界への準備は出遅れた。

 美容関連の仕事に志望を変えたのは9月から。11月も就活情報会社「マイナビ」主催の合同会社説明会に参加し「友人はもう決まっている。もっと早く動けば良かった」と落ち込む。来年の就活環境がより厳しくなることを心配し「今年中に決めたい」と焦る。

 マイナビによると、2021年卒業予定の大学生らの採用活動をした企業のうち20%超が内定を出す基準を前年より厳しくしていた。ボーダーラインで採用されていた学生が割を食った可能性がある。コロナで業績の厳しい企業の採用には「限界がある」(財界関係者)というのが実態だ。

 先行きはさらに霧が濃い。全日本空輸を傘下に持つANAホールディングスは22年春の新卒採用を約200人にとどめる方針。採用活動を中止した21年卒の約700人から一段と削り、コロナ前からは9割以上の圧縮だ。日本航空も21年卒の採用活動を中止するなど、就職人気で「狭き門」だった航空大手は国際線の需要激減で入り口がほぼ閉じられている。ある業界関係者は「(就職希望者には)『心苦しい』の一言だ」と漏らした。

 もともと人口減などで厳しい百貨店業界では「採用抑制と自然減で要員を圧縮する」(村田善郎・高島屋社長)との声が目立つ。外食大手は雇用維持すら難しい局面に立たされており、コロナ禍が長引けば新卒者が一段とあおりを受けかねない。

 「第2の就職氷河期世代をつくらない。政府一丸となって、前途ある学生の雇用を守るため全力を挙げる」。加藤勝信官房長官は17日の記者会見で強調。政府関係者は「厳しい数字だ」と深刻に受け止め、採用減の分析と対策を急ぐ。

 政府はまた、雇用状況の悪化を踏まえ、卒業後3年以内の既卒者は新卒者扱いとするよう経済団体に要請している。こうした対策に腐心するのも氷河期世代の再来を是が非でも避けたいという思いがあるからだ。

 将来社保費膨張も

 氷河期世代はバブル経済崩壊後の1990年代半ばから約10年間に社会に出た人たちを指す。就職できなかったり非正規雇用を続けたりして不安定な収入に苦しむ人が多く、このまま高齢化すれば公的支援が必要となり、将来の社会保障費の膨張を招きかねない。

 日本総研の山田久副理事長は、感染拡大の第3波で緊急事態宣言が出されるなど深刻な状況になれば、さらに落ち込むリスクが高まると指摘し、こう予測する。「コロナの収束に時間がかかり、経営の先行きが見えない状況は続く。数年間は新卒採用も厳しさが残る」

 常見陽平・千葉商科大准教授(労働社会学)の話

 旅行業界など求人が大きく減った業種がある一方、人手不足で採用意欲の高い業種は依然多いという調査データもある。新型コロナウイルスの影響で就職イベントが相次いで中止となり、大学構内も閉鎖されるなどしたため、就職活動に関して学生が十分に支援を受けられず孤立しているのではないか。リモート授業を続けている大学は多く、大学側も学生の内定状況の把握に苦労している。国は求人を掘り起こし、学生と企業のマッチング支援を強化すべきだ。

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