ここで整理しておこう。世界には三つの方式の洗濯機がある。日本は底の羽根による「パルセーター式」である。水量は多く洗浄力は高いが生地は傷みやすい。米国はかくはん翼が動く「アジテーター式」は、水量は多く洗浄力は弱い。ただ生地はからみにくい。欧州はたたき洗いする「ドラム式」で、水量少なく洗浄力は弱いが、生地は傷みにくい。
興味深いのは、これらの3つの方式が、それぞれの地域で生活する人たちが手で洗濯していた時代の自然条件(水が軟質か硬質かなど)や習慣を踏まえて発展したということだ。日本であれば、軟水の水の勢いを利用して短時間に洗濯する文化がパルセーター式を生み出した。
斉藤さんによれば、トレンドとすれば、この3つの方式の普及が徐々に地域を越えているという。正確に言えば、ドラム式が日本にも普及しつつある。また、これまでアジテーター式が主流であった北米・南米にパルセーター式やドラム式が、他方、パルセーター式のシェアが高かったアジア諸国にもドラム式が浸透してきている。中国でも2000年代はドラム式が15%程度であったのが今は50%程度まで普及している。これは中国人の欧州への憧れが絡んでいそうだ。
これらの変化の理由として、一つには使用する水量が多いタイプは環境問題の観点から歓迎されないとの潮流がある。特に市場のドラム容量増大という要求と水資源負担減との2つの要素のバランスが問われるなかで、アジア諸国ではパルセーター式が劣勢になっている。
ただ、ドラム式には別のエネルギー問題がある。斉藤さんは、次のように語る。
「ドラム洗は温水で少しの水で洗うのが前提で設計されています。ドラムは、もともと60度(最近はエコトレンドで40度がデフォルトに)で洗うので、水道の給水を60度まで上げるにはかなりの電気を使用します。また、マックスで90度です。熱湯に耐える材料や構造の安全性の要求度も高くなります。こうした面がドラム洗を高額にしています」
この結果、一方的にドラム式が市場の多数を占めるには至っていないようだ。