働き方

「官製春闘」菅政権でも継続 政府、経済界に賃上げ要請へ

 経団連が24日開催した審議員会に菅義偉(よしひで)首相らが来賓として出席し、日本経済の回復に向けて経済界の協力を求めた。審議員会では西村康稔経済再生担当相が、来年の春闘に向け政府として経済界へ賃上げを要請した。これまでは安倍晋三前首相が賃上げを呼びかける“官製春闘”が定着していたが、新型コロナウイルスの感染拡大で業績が悪化する企業も多い中、菅政権下でも官製春闘が継続する。

 菅氏は「グリーン(環境)とデジタルを原動力に経済を成長軌道に乗せていく」とあいさつ。続いて西村氏が「雇用を確保しながら経済の好循環に向け、マクロの視点で賃上げの流れを継続してほしい」と述べ、企業経営者らに政府としての賃上げを直接要請した。菅氏はこの日、賃上げについては言及しなかったが、すでに経済財政諮問会議などで「デフレへの後戻りを回避するため、賃上げの流れを継続してほしい」と発言、賃上げ継続を求めている。

 来年の春闘をめぐっては、新型コロナの影響などで情勢が大きく変化する。今年の春闘までは、経団連など経営側も「経済の好循環を図っていくためにも、賃上げのモメンタム(勢い)は必要」と表明し、従業員の基本給を一律に引き上げるベースアップ(ベア)2%程度を要求する労働組合の中央組織である連合の方針に対しても、一定の理解を示してきた。

 しかし、業績が悪化する企業が多い中、来年の春闘に向けては経営側は厳しさを隠さない。経団連は経営労働政策特別委員会(経労委)で春闘方針を検討しているが、「一律の賃金引き上げの検討は現実的でない」とするなど、ベアには応じられないとの姿勢を示した。

 ただ、経団連の中西宏明会長が経済財政諮問会議において、書面で「賃金引き上げのモメンタムが維持されるよう取り組んでいく」と表明。とりまとめを進めている経労委報告には「業績が好調な企業はベアも選択肢」と盛り込む方向となるなど個々の状況に合わせた対応をとるスタンスに修正しつつある。来年の春闘は厳しい交渉になることは避けられないが、そうした中で業績を伸ばした企業の対応が焦点となる。 (平尾孝)

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus