「パソコンの分解や部品の選別は、日本語が分からなくてもできる作業です。見て覚えてもらっていますし、英語やフランス語を話せるスタッフがいますので、工夫は必要ですがコミュ二ケーションはしっかりと取れています。また、彼らはボランティアから日本語を習っていますので、少しずつ言葉や習慣を覚え、日本での生活になじんでいます」
難民が自立できるように日本人と同水準の給与を支払っており、スキル次第で昇給もあるという。また、病気になったときや住まいの契約など、困りごとは日本人スタッフが手厚くサポートしている。
将来母国に帰ったら事業を起こしてほしい
「難民が生まれる要因の一つは部族間の紛争です。その背景には他の文化や民族を受け入れないという長年の因習があります。この問題を解決するのは非常に困難ですが、しかし、少しでも多様性を認める社会になっていくことが第一歩になるのではないでしょうか。パソコンも同じで、新品一辺倒ではなく、再生品も活用されるようになれば、より自由で多様性のある社会になると私は考えています」
ZERO PCは今後、認定中の難民が100名働ける環境を整備したいと考えている。
「海外にも拠点をつくりたいと考えています。難民の受け入れは国によって状況が異なります。ですので、制限の少ない国でも展開していこうと構想を練っています。近い将来的には、自社でもパソコンをつくりたいと考えています。オランダにFairphone(フェアフォン)というスマートフォンがあるのですが、これは再生を前提としてつくられています。リサイクルプラスチックの利用をはじめ、紛争の資金源となっていない鉱物の使用、修理しやすいようにパーツごとに取り外して交換できるように設計をしていたりと、環境への負荷を減らしているのです。この事例をモデルに、人にも環境にも負荷のより少ないパソコンをつくりたいと考えています」
パソコン再生の技術を身につけて、将来母国に帰ったら事業を起こしてほしい。それが難民問題の解決につながるはずだ、という青山さん。始まったばかりの活動だが、世界を変える可能性に満ちていると感じた。(吉田由紀子/5時から作家塾(R))