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「事業承継」はなぜ社会課題なのか “変革”と“維持”の狭間で悩む経営者たち (2/3ページ)

葛谷篤志
葛谷篤志

 WEBマガジン「事業承継ラボ」の独自調査(対象者683人)では、事業承継において、下記のような新たな課題があることも浮き彫りになりました。

  • 後継者が見つからない
  • 後継者の経営スキルの問題から任せられない
  • 事業の長期的な見通しが立たないため、任せられない
  • 経営者としてまだ事業を維持したい

 実際に事業承継を真剣に考えている企業も、経済面、人材面などの見通しがすぐに立ちにくいといった上記の事情により、事業承継という課題の優先順位が下がり、その準備に徐々に遅れが生じてしまっています。

 かたや日本の経営者にとって、現状の事業を維持することよりも、事業の「磨き上げ」が重要だとも謳われています。「磨き上げ」とは、会社の現状を様々な観点から調査・把握を行い、事業に関わる不備を是正し、会社の強み、改善ポイントを明確にしていくことです。事業の“断捨離”や変革ともいえます。

 年配の経営者の中には、自身の後継者に、引き継いだ事業の磨き上げ実現を期待する人もいます。しかし、いざ事業承継を行うという段階で、事業の整理などの「引き継ぎ」に時間を要し、その間に事業が衰退していくというケースも少なくないのです。

 「事業承継の方針を早めに確定する」ことで、後継者または後継者候補が事業理解や社員理解を行う時間を十分に確保できます。同時に、方針を早く固めることで現経営者と後継者がそれぞれ、企業の磨き上げに時間をとることが可能となります。磨き上げと事業承継はどちらを優先させるべきかと考えるのではなく、同軸で捉えるべきなのです。

事業承継が進まない企業が実施すべき「事業承継計画表」の作成

 実際に、事業承継を実施した方が良いと考えても何から進めていいかわからない経営者のために、中小企業庁は「事業承継計画表」 というフォーマットを提供しています。事業承継を行う上での計画を10年間でまずは書き起こすことで、どんなことが必要かを確認するためのフォーマットです。

 詳細な書き方は本連載の第2回以降に解説いたしますが、重要なのは、事業承継を10カ年計画で作成をしてみることです。現在の経営者が65才であれば、10年後は75才です。後継者候補がいくつになっているかを書き出すことで、視覚的に把握することが可能となります。

 商工会議所等で書き方の説明会などもありますが、実際に書いてみると、経営者の実年齢と、後継者の実年齢をみるだけでも、早く引き継がなければならないという意識に駆られます。事業承継計画表に記載されたタスクをクリアしていく中で、また計画を立てた段階で、隠れていたリスクについて把握できることも少なくありません。

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