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「君は将来、大臣になるぞ」 山梨大出身医師がインドネシア保健副大臣で奮闘

 インドネシアのジョコ大統領は昨年12月の内閣改造で、保健副大臣に医師のダンテ・サクソノ・ハルブウォノ氏(47)を起用した。急拡大する新型コロナウイルス感染への対策に取り組んでいる。ダンテ氏は平成17~20年に山梨大大学院(山梨県中央市)で学び、博士号を取得しており、恩師らは「彼なら任務を果たせる」と手腕を期待している。(渡辺浩)

 知識に白羽の矢

 インドネシアの有力紙コンパスによると、ダンテ氏は中部ジャワ州テマングン生まれ。インドネシア大を卒業後、糖尿病の研究を始め、博士号を取るために山梨へ留学。帰国後はインドネシア大講師や国営石油プルタミナの病院部門の理事などを歴任してきた。

 インドネシアでは新型コロナの感染が急拡大しており、感染者は80万人以上、死者は2万人以上で、東南アジアで最多。ダンテ氏は感染症の専門家ではないが、医学知識と管理能力で白羽の矢が立った。

 シンガポール紙ストレーツ・タイムズはジャカルタ発で、ジョコ大統領がダンテ氏に医療予算の効果的、効率的な支出とワクチン接種態勢の早急な整備を指示したと報じた。

 世界一イスラム教徒が多いインドネシアでは、製造過程で豚肉を使っている可能性があるワクチンが戒律に沿う「ハラル」かどうかが議論となっているが、ダンテ氏は就任後の声明で「集団免疫を得るために接種は非常に重要」と推進を表明。13日から国民への接種が始まった。

 「統率力ある」

 「ダンテは賢明で統率力がある。豊富な医学知識で母国のコロナ対策に成功するだろう」

 山梨大医学部第3内科の教授としてダンテ氏を指導し、現在は冲中記念成人病研究所(東京)の所長を務める小林哲郎名誉教授(72)はそう語った。

 小林氏はダンテ氏が帰国した後に招かれ、インドネシア大で講演したことがある。「名所を案内してもらったのが懐かしい。私が平成26年に退任する際に文章を寄せてくれたが、その後のことは分からず、副大臣になったと知って驚いた」という。

 「インドネシアと正反対で山梨の冬は寒いとこぼしながらも研究に没頭していた。あの忍耐強さで頑張ってほしい」とエールを送った。

 母国発展に情熱

 インドネシアのニュースサイト、デティクは、ダンテ氏が1年分の奨学金しか得ていなかったため、山梨ではファストフード店でアルバイトしていたこともあったと報じている。

 山梨大講師としてダンテ氏を教えた加納岩総合病院(山梨市)の会田薫副院長(65)は「妻子と一緒に来ていたので大変だったかもしれない。すし店に連れて行ったら『おいしい』と言いながら食べていた」と振り返る。

 ダンテ氏は「日本ほど医療が進んでいないインドネシアでは、糖尿病性壊疽(えそ)で脚を失う人が多い。何とかしたい」と、母国の医療発展に情熱を見せていたという。

 「『君は将来、母国で大臣になるぞ』と言っていたら、本当に階段を上っていた。山梨で学んだことを生かして危機を乗り越えてほしい」。会田氏はそう期待した。

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