2021春闘

連合・神津会長と経団連・大橋副会長に聞く

 企業経営に新型コロナウイルス禍の影響が広がる中、2021年の春闘がスタートした。連合は経済成長維持へ、基本給を一律で2%程度引き上げるベースアップ(ベア)を従来通り要求する。一方の経団連は一律の賃上げは困難として、雇用の維持やテレワークなど柔軟な働き方を掲げる。連合の神津里季生会長と、経団連の大橋徹二副会長(コマツ会長)に議論のポイントを聞いた。

 連合・神津里季生会長

 雇用劣化危機問われる

 --今春闘の焦点は

 「今回は、2つの危機が問われている。第1が足元のコロナに対し、命と暮らしを守る取り組みだ。医療崩壊の現状も改善されていない中、低賃金、長時間労働が多いとされる(医療関係従事者など)エッセンシャルワーカーの処遇改善につなげていく必要がある」

 --もう一つは

 「第2がコロナ以前からあった、日本の雇用が劣化しているという危機だ。この20年間、日本の賃金水準が停滞を続けてきた中で、欧米先進国の賃金は日本の1.5倍となり差が開いた。過去7年間で賃上げを実現してきたが、この流れがコロナで途切れ、再びデフレの闇に戻るなら、脱却に今まで以上の大きなエネルギーが必要になる」

 --コロナ禍にあっても例年同様の要求水準だ

 「コロナだから『賃上げはできない』という経営側の一言で済まされるなら、賃上げの持続性がなくなり、これまでの賃上げによる経済の好循環でなく、悪い循環に陥ることになる。賃上げができる企業は実施すべきだ。その意味でも連合全体としてベア2%の賃上げを求める意味がある」

 --業務と成果で仕事を評価する欧米諸国の「ジョブ型」といった新しい働き方もテーマだ

 「今の議論は、自社の賃金制度にジョブ型の働き方も付け加えるというもの。高い賃金で有能な人を迎え入れるという仕組みに過ぎず、世界の共通言語となっているジョブ型という働き方とは異なるものだ」

 経団連・大橋徹二副会長

 好調企業にベア選択も

 --コロナ禍という異例の環境下での春闘となる

 「コロナのインパクトで、経済環境は大きく変化している。経営状況も、業種や個社によって状況が全く異なる。業績の悪いところは雇用維持や事業の存続を優先すべきで、その意味では一律での賃上げは難しいという認識だ。とはいっても、過去7年間でベアが続いてきたモメンタム(勢い)は維持すべきだとも考えている。業績が好調な企業については、ベアも選択肢となる」

 --連合は一律ベア2%程度を目標に掲げる

 「労働運動を進める連合が、そういった目標を掲げることには一定の理解ができる。だが、一律賃上げは難しい。個社の交渉で労組が一律ベア2%を目標に要求すれば、これまでの労使の信頼関係が損なわれ、ギスギスするのではないか」

 --ジョブ型雇用は

 「日本の賃金レベルは先進国の中でも低いままだ。これを改善するには、ジョブ型を取り入れることで(個々の従業員の)実績を上げ、企業全体の収益を上向かせることが、賃金の引き上げにもつながる」

 --在宅勤務も広がる

 「テレワークとジョブ型は親和性も高い。また、これまでのテレワークは限定的な活用だったが、柔軟な働き方の実現に向け、標準的に取り入れることになるだろう。ただ、社内での仲間意識や評価の在り方などもあり、実際に出社するリアルな働き方とミックスした働き方を各社がそれぞれ模索することになる」

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