ブランドウォッチング

亀屋万年堂買収で注目 シャトレーゼ、あえての「街のケーキ屋さん」マーケティング (1/2ページ)

秋月涼佑
秋月涼佑

 子供の頃昭和の時代、どんな街にも必ず存在するお店というものがあったように思います。肉屋さん、魚屋さん、八百屋さん、小さな本屋さんに、お蕎麦屋さんがあって、そうそう最近BSテレビの食べ歩き(飲み歩き?)で注目される町中華なんってのも大体一軒はありました。

 そして、そんな街の商店街で「ケーキ屋さん」は、何か別格に華やかでうれしい存在だったように思い出されます。誕生日やクリスマスにホールケーキを買ってもらえるワクワク感、友だちが家に来たりどこかのお家にお邪魔するときに買うケーキをどれにしようか迷う楽しさ。宝物を扱うようにフォークをケーキに入れた瞬間の高揚を今でもイキイキと思い出せるぐらいです。

 さて、時代は移り我々の購買行動も、流通環境もずいぶん様変わりしました。かつてあれほど特別なものだったケーキですが、今や「スイーツ」と概念を拡張しながらコンビニ、カフェ、ファミレスで気軽に楽しめ、今や芸能人並みに有名なパティシエが登場するまで活況を呈するカテゴリーに成長しました。

昭和のケーキ屋さんのワクワク感を感じさせるお店づくり

 逆に言えばそんな競争の激しい市場で、シャトレーゼの好調な業績が話題となっています。直近2020年3月期の業績は110%増の732億円。今期もコロナウイルス流行での巣ごもり消費の恩恵もあり販売好調とのこと。

 そう言えばということであらためてシャトレーゼのお店を覗いてみると、良い意味で昭和のケーキ屋さんのワクワク感を感じさせてくれることを再認識。お菓子の家の世界観というのでしょうか、ヨーロッパの童話絵本を連想させるようなホッコリとしたファンタジーをそこはかとなく感じさせてくれます。

 店づくりは、何も奇をてらった部分がありません。社名は、山梨県甲府が本拠で、「シャトー(城)」と「レザン(ぶどう)」で「ブドウの城」というこれもまた洋菓子としては非常にオーソドックスな由来。

 そして路面店であれば山小屋風の店舗デザインやヨーロッパスタイルのロゴ書体が、誰が見てもああここは洋菓子店かフランス料理のレストランだろうと気がつきます。店内は簡素と言って良いような素朴な内装に所狭しと、什器やアイスケースに焼き菓子やアイスクリームなど豊富なバラエティの商品が並んでいます。そしてもちろん主役は、お店の真ん中に煌々とショーケースで輝くケーキたち。彩りも鮮やかで、むしろシンプルな内装が商品を引き立てているようにも感じます。

 やはりブランドは人間が”人となり”という言葉で全人格的に評価されるように、表面的に飾られた何かだけではなく、その商いの本質を生活者が感じ取るものだと思います。定員さんのキビキビと親切な対応といい、最先端とかオシャレさとかを追求してない分、努力のベクトルが実直な何かに向かっていることが伝わってくのも不思議なものです。でもそれは食品を扱う企業体にとってはある意味基本的な必要条件かもしれません。

 そう言えば、今年1月大雪による北陸自動車道立ち往生時に、輸送中のお菓子を配ったのも等身大の温かみを感じさせてくれたこのブランドらしいエピソードだったように思います。(立ち往生の北陸道で積み荷のお菓子配る 菓子製造販売シャトレーゼのトラック

 こうも自然体で自社のアイデンティティを確立し、そこで働く人にも顧客にも浸透していると、ブランディングは何も特別なやり方やアプローチが必要ではないことを悟らせてもらえます。そう言えば、昭和のケーキ屋さんにもこんな”真っ当さ”と”ざっかけなさ”が同居していたような気がします。

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