働き方ラボ

NHK武田真一アナの「大阪異動」人事を読み解く 転勤を“左遷“扱いに違和感 (2/2ページ)

常見陽平
常見陽平

 転勤は会社員にとって、ドラマだ。思えば、平成初期にはユニコーンの「大迷惑」という曲が話題となった。転勤の悲哀を描いた歌だった。会社員であることのデメリットの象徴、「オワコン」と呼ばれる転勤だが、視点を変えてみるとメリットがないわけではないことは確認しておきたい。異動する社員にとっては、新しい環境で仕事に取り組むことができるし、経験を積むこともできる。その拠点にとっても、テコ入れなどにつなげることができる。よく「左遷」の象徴とされるが、それはその拠点で働く人にとっても、その人にとっても失礼だ。

 人材マネジメント視点でみる武田アナの転勤

 武田アナが出演していた『クローズアップ現代+』では、転勤の諸問題を描いた回もあった。皮肉なことのようにも見える。

 とはいえ、少しだけ冷静になって考えてみよう。実はこれは、関西エリアの視聴者にとっても、NHKにとっても、武田アナにとっても、ナイスな人事ではないか。地元の独自の番組が強いエリアに、看板アナが赴任することは間違いなく地域の活性化につながる。あれだけの大御所アナが発信することによって、関西に対する注目が高まることが期待される。あたたかさが自然に溢れ出る武田アナは、関西向きとも言えるだろう。彼としても新たな強みを身につけ、さらに人気を高める機会になりえないか。彼が東京に戻ってきたときに、さらに人気が爆発しそうな予感である。

 武田アナファンとしても、人材マネジメント視点でも、さらには関西出張をするたびにそこで暮らし働く人を好きになる関西ファンからしても、「忖度人事」「左遷」という言葉ばかりひとり歩きしたことについては違和感、さらには不快感すら抱いてしまう。二階幹事長との件があったがゆえにセンセーショナルに伝えられたが、もしこれがなければ、拍手喝采を受ける人事にもなり得たのではないか。仮に政権からの圧があったとしても、メディアはそれを跳ね除けなくてはならないし、放送局は記者やアナウンサーを守るべきだ。

 ただ、大阪発の肝いりの新番組を立ち上げる企画だったわけであり、その人事がここまで急に進むのかというのは疑問である。そもそも今回の異動を「左遷」と呼ぶのは関西とそこで暮らす人に対して失礼だと言いたい。

 打合せでも「誠実オーラ」全開だった

 一度、『クローズアップ現代+』に出演したことがあるのだが、武田アナは打ち合わせに現れた瞬間からあたたかく、その誠実なオーラに感動した。打ち合わせも丁寧で完璧だった。終了後にもらったご挨拶のメールも、意外にもオヤジギャグなどが書かれており、素敵だった。彼が『SONGS』にゲスト出演し、憧れの佐野元春さんにインタビューをしている様子は、見ているだけで泣けてきた。ジャケットの下にTシャツという格好で出演したのもおちゃめだった。いつも視聴者として番組を楽しみにしているが、弱者に寄り添う視点、穏やかでありつつも、重いテーマを誠実に伝える姿勢にいちいち感動した。

 様々な想いがあるかと思うが、私は武田アナの大阪転勤からむしろ勇気をもらった。この春、転勤するあなた。武田アナ同様、新しい地で、伝説をつくろう。

常見陽平(つねみ・ようへい)
常見陽平(つねみ・ようへい) 千葉商科大学国際教養学部准教授
働き方評論家 いしかわUIターン応援団長
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。リクルート、バンダイ、クオリティ・オブ・ライフ、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部准教授。専攻は労働社会学。働き方をテーマに執筆、講演に没頭中。主な著書に『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社)『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞出版社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)など。

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