12日、佐賀地裁が下した九州電力玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)の設置変更許可取り消しと運転差し止めを認めない判決は妥当といえる。ただ、原告側は控訴する方針で、自らが望む司法判断を求めて繰り返される「反原発」の大合唱は終息の見通しが立たない。(中村雅和)
「国と当社の主張が認められた妥当な結果だ」
この日午後、佐賀市内で記者会見した九電地域共生本部の金田薫司原子力訴訟担当部長は、淡々とこう語った。今回の判決で、司法による原発停止リスクはひとまず回避された。ただ、「反原発派」は各地で電力各社や国を相手取った訴訟を起こしており、司法判断に原発稼働が左右される構図は続く。
九電は原子炉等規制法上の運転期限(40年)を令和6~7年に迎える川内原発(鹿児島県薩摩川内市)を抱える。同法上、20年の延長は可能だが、1千億円単位の追加投資が必要だ。今年3月現在、運転開始から30~39年の原発は九電を含め全国で11基に上る。電力各社は10年以内に延長是非を判断することになる。電力システム改革による競争環境の激化や投資回収の予見性低下で、電力各社の収益構造が傷つく中、残存する司法リスクは各社の判断に影響を与えかねない。
仮に、国内の主要電源から原発が脱落すれば、電力の安定供給への影響は大きい。「東日本大震災後の原発長期停止で電力は不足しなかった」との指摘もあるが、火力発電の焚(た)き増しに頼っていたのが現実だ。国内外で「脱炭素」に向けた圧力が高まる中、火力依存を続けることは難しくなる。さらに今冬の電力逼迫(ひっぱく)の一因とされるLNG(液化天然ガス)の不足は、特定のエネルギー源に依存する危うさを示した。
ある業界関係者は、こう嘆息する。
「電力を取り巻く環境悪化は消費者側を直撃する。(司法リスクなどで原発が止まれば)最終的に家庭や企業がツケを払わされることになる」