ミラノの創作系男子たち

「合理」と「合理ではないもの」の間で ジュリアのアートに見えるもの~女子編 (1/3ページ)

安西洋之
安西洋之

 「作業中に音楽を聴きますか?聴くとしたらどんなもの?」

 これをクリエイターへの質問の定番としてきた。今回のジュリア・ブリンデッリは「分野を問わず、アカデミックなカンフェランスをYouTubeで聴いていることが多いわ」と答える。「気が散らない?」と重ねて尋ねると、「単純作業だから」とのコメントが返ってきた。

 ジュリアはアート作品を制作するに頭を使わない。ひたすら手を動かしていく。そして完成した作品を目の前にして、自らの作品のコンセプトを構築していくのだ。これは意外な展開であった。

 というのも、彼女はフランスの作家の文章の文字を切り抜いて「解放させる」。

 あるいは地図に穴をあけ、その切り口に刺繍を施す。

 ジュリアは見るからに知的雰囲気溢れる作品を作る。頭脳先行型にも見えてしまう。だが手を動かしている間、作品のことを考えないのである。

 職人的に手を動かし、作業が終わるとキュレーターか批評家のように自分の作品のコンセプト作りに励む。彼女は「フロイドの夢の分析みたい」と表現する。夢を見る人間と夢を分析する人間という2人に分かれているという意味だ。

 彼女はアーティストとしてのトレーニングを受けてきたわけではない。ローマの大学で勉強したのは文学や美学である。

 「ローマで生活していた少女時代から頻繁にフィレンツェ郊外にある祖父母の家に滞在し、祖母が作業する刺繍に親しんでいたのが素養の礎になっているかも」と思い返す。

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