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「変革を!」意気込むあまり後継者が陥る失敗 会社を継ぐときは信頼できる“相棒”を連れて (1/2ページ)

葛谷篤志
葛谷篤志

 「事業承継」について解説する連載コラムの第5回は、後継者が事業承継を行う際に注意すべきポイントについて、前回に引き続き家族承継を中心に解説いたします。

 最近では、「ベンチャー型事業承継」(経産省WEBサイト)に積極的な後継者も増えています。先代から受け継いだ経営資源を活用し新規事業、業態転換、新市場開拓など、「事業変革」に挑戦することでより良い企業にしていこうという取り組みです。今回はそんな後継者に伝えたい注意点を解説していきます。

 「事業承継計画表」を構築していく中で、先代が築いた事業を引き継ぐ事にリアリティを感じ、本格的に事業を譲り受ける立場になると、使命感や責任感のあまり、独善的になるケースもあります。そうした失敗を避けるために、後継者が意識すべきポイントをまとめます。

  • 会社を築き上げたのは、社長であり社員のみなさまだということを忘れない
  • 新規事業を立ち上げの際は、古くからの社員の意見を取り入れる
  • 孤立しないため「チーム」を形成する
  • 今だけでなく、過去の取引先も大切にする

「会社を築き上げたのは、社長であり社員のみなさま」

 事業承継は、一人で新規事業を始める訳ではありません。第4回でも記載しましたが、先代経営者が培ってきた、歴史・想い・取引先を汲み取って事業を引き継ぐことがとても大切です。

 それと同時に、会社を築き上げて来た過程には、先代社長と一緒に戦ってきた社員のみなさまがいることを忘れてはなりません。時には、社長よりも現業に関して詳しいこともありますし、安定した事業の根幹には、社員のみなさまの社内・取引先に対する気配りがあるかもしれません。家族承継における後継者は、社長になることが決められており、会社を動かす立場になります。しかし、決して一人で動かす訳ではないのです。

 事業承継前の学生時代に経営を学んだり、サラリーマン経験の中で多くの実績を作ったとしても、場合によっては、実務を行う際には、既存の社員のみなさまの力が必要となります。社長になることが前提だからこそ、既存の社員のみなさまの業務を労い、思いや話に耳を傾ける必要があります。

新規事業を立ち上げる際は、古くからの社員の意見に耳を傾ける

 若き後継者は、事業を譲り受ける際に、事業の変革を望むケースも少なくありません。時代に、合わせた事業の変革を行い、企業をより拡大・成長させるイメージを描くことは、これからの時代、事業承継の形の一つとしてスタンダードになっていくと考えられます。

 実際に、私がインタビューした後継者の中には、酒蔵を引き継いだ際、製造工程を見直し、事業運営方法を変革した方や、居酒屋から通販事業に切り替えられた方など、事業の変革を行って成功されている方々が多くいらっしゃいました。

 事業を変革することで、会社を成長させていく。最近では、「ベンチャー型事業承継」という言われ方をすることもあります。

 ベンチャー型事業承継の際におすすめしたいのは、先代社長そして、先代と共に会社を大きくしてきた社員のみなさまにしっかりと話を聞く、事業変革プランや事業承継プランを共有することです。下記のようなメリットを享受することができるからです。

  • 事業変革をしようとした過去の事例や経緯を聞くことができる
  • 事業変革プラン遂行の上で有益な取引先があるという情報を得られる
  • 事業変革プランの共有で、既存の社員のモチベーションが上がる
  • 事業承継プランの共有で、既存事業にもメリットが生まれる

 既存の社員のみなさまは、後継者を迎え入れることで、「何かが変わってしまう」という、大なり小なり不安を感じるはずです。その中で、何が変わるかわからないということだと不信感につながります。オープンに共有することと同時に、低姿勢で、アドバイスを求めることで、既存事業との連携がしやすくなり、チームワークを生み出すヒントになります。

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