「ビジネス視点」で読み解く農業

農業振興の最前線 (1) 「超農力」を生み出し新たな就農者を獲得 宮崎県の取り組み (1/2ページ)

池本博則
池本博則

 第3回目の今回からは、『マイナビ農業』が事業として取り組む「農業振興」の最前線をお伝えしていきたいと思います。

 農業は、古くから地域の産業の根幹を担う産業です。高度経済成長期を経て、そうした機能が変化した地域ももちろんありますが、今でも広大な耕作面積を誇る北海道や九州地区において農業は地域産業の根幹を担っています。

 地方都市にとって農業は無くてはならない産業であり、また、持続可能な地域づくりのためには不可欠な存在です。第1回、第2回でご紹介した通り、農業従事者の減少や高齢化、新規参入の高いハードルや後継者問題などは、どんなに強い農業県でも抱えている問題です。

 そんな中、今回は農業産出額全国第5位(※1)、ニッポンの食料供給基地ともいうべき「宮崎県」の県ぐるみの取り組みをご紹介し、地域が取り組む農業振興の最前線を感じていただき、民間企業がビジネスチャンスを考える上での素地にしてもらいたいと思います。(※1:引用 農林水産省「平成30年農業産出額及び生産農業所得(都道府県別)」)

■宮崎県の農業-その魅力

 実は私自身、県の農業振興をお手伝いするまで、宮崎に訪問した事はありませんでした。みなさんは行ったことがありますか?

 空港に降り立ちまず目の当たりにしたのは、ヤシ科のフェニックスが陽射しを浴びてその葉を揺らす、まるで南の島のような光景でした。後から知ったことですが、宮崎県は、平均気温、日照時間、快晴日数の平年値をもとに計算した「ひなた指数」で全国堂々の1位の県。

 そしてここでは温暖な気候に加えて、豊かな土壌、きれいな空気や澄んだ水など、自然の恵みを最大限に利用した稲作や畜産、施設園芸が盛んに行われています。

 宮崎県は、全国トップクラスの生産量を誇る品目を数多く有しています。野菜・花きでは、きゅうりで全国1位(12.0%)、スイートピー全国1位(49.3%)、ピーマン全国2位(18.8%)をはじめ、マンゴー全国2位(37.5%)など。特に、ビニールハウス等の施設で栽培する付加価値の高い促成栽培が盛んです。畜産では、ブロイラー全国1位(20.5%)、豚全国2位(8.9%)、肉用牛全国3位(9.7%)となっています(※2)。(※2:引用 宮崎県農政水産部「統計でみる宮崎県の農業2018」)

 また、平成6年3月に策定した「みやざきブランド確立戦略構想」をもとに、「作ったものを売る」から「売れるものを作る」への転換を図りながら、農産物のレベルアップや産地のイメージアップに取り組んでいます。その結果、内閣総理大臣賞を3大会連続で受賞した「宮崎牛」や完熟マンゴー「太陽のタマゴ」など、多くの宮崎産農畜産物が、大消費地でも高い評価を受けています。とても余談ですが、個人的には冬に生産される宮崎ブランドの完熟金柑「たまたま」が大好きです(笑)。

■なぜ宮崎の農業は強いのか?

 宮崎県の農業の歴史を県職員のみなさんのお話から紐解くと、最初から強いわけではなかったということでした。実は宮崎県の農業産出額は、1955年頃は全国で30位くらいでしたが、現在は先述の通り5位に上昇。

 ここに至るまでには、その時代ごとの課題に果敢に取り組み、変化を促してきた先人の努力があったということでした。県の農業において大きな転機となった政策の一つが1960年の「防災営農」。宮崎県はかつて「台風銀座」と言われ、秋になると収穫前のコメが全滅するという事態がしばしば発生していたのだとか。

 そこで思い切ってコメの作り方を「早期水稲」に変えて稲刈りを10月から8月に前倒しするとともに、稲作中心の農業から施設園芸や畜産に取り組む農業への転換を図られ、それまでの常識を覆したチャレンジの結果生産力の維持・拡大を作りだしました。まさに生産者の決死の覚悟と、行政、農業団体、生産者の絆があってこそ達成できたのだと思います。

 こうした気候や価格の変動に柔軟に対応する力こそが、宮崎県の「超農力」ともいうべき力であると感じました。

 そんな力を持った宮崎県と『マイナビ農業』は、様々な社会変化に対応すべく、2019年6月に「農業人材の確保・育成に関する連携協定」という協定を締結しました。

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