ブランドウォッチング

松山英樹選手の歴史的快挙で味わう 「マスターズ」のプライスレス (2/3ページ)

秋月涼佑
秋月涼佑

■際だってアイコニックなマスターズ・トーナメント

 それにしても「マスターズ・トーナメント」です。全英オープンはじめ男子メジャー四大会はどの大会も特別ですが。メジャー中のメジャー。マスターズが別格のブランド力を持つ大会であることに異論は多くないと思います。

 そもそもトッププロ並みの実力を持ちながら生涯アマチュアを通し、その並外れて抑制的なプレースタイルからも「球聖」と尊敬されるボビー・ジョンズが企画し、自らも設計に関わったオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブで開催されることがこの大会に歴史的価値を与えています。会員300名、ビジターとしてプレーすることさえ難しいプライベートコースで開催される別格感は、そもそも広大な土地を専有する贅沢さを内包するゴルフの特質を否が応でも表象しているように感じられます。

 地元への貢献を含め名士たる説得力があってこそ実現できるプライベートコースの風格は、映画「風と共に去りぬ」の舞台、アメリカ南部の古参ジョージア州の空気感を存分に醸し出しています。そんな舞台でアーノルド・パーマー、ジャック・ニクラウス、タイガー・ウッズとゴルフの歴史そのものであるレジェンドたちが優勝をかけて死闘を繰り広げてきた価値はまさにプライスレスなものという他ありません。

 それにしても多くの著名なスポーツ大会、ゴルフトーナメントと比べてもマスターズのアイコニックつまりビジュアル面での象徴性は際立っているように思います。

 優勝者とオーガスタナショナルのメンバーのみが着用を許されるグリーンジャケット、米南部ならではの濃い緑に鮮やかなアゼリア(ツツジ)。日本でも植生が強いがゆえに街路樹として多用されるツツジもオーガスタナショナルではまさにその強コントラストな色彩が例年4月の季節感もあいまって一際印象的です。さらにはプランテーションスタイルのクラブハウスなど、マスターズのブランド力をサポートしているのがこの統一感あるビジュアル、あらゆる視界に入る要素が世界観を表現していることには驚かされます。

■商業主義と一線をひくことでの存在感

 ただし、あくまでマーケティング戦略が先行したものではなく、オーガスタナショナルのクラブメンバーと大会ボランティア、パトロンと呼ばれるギャラリーによる商業主義と一線を画す手弁当スタイルが大会をさらに重みあるものにしていることが特筆すべきところです。

 考えてみれば、世界的な名声を確立しているスポーツ大会はF1モナコ・グランプリ、ツール・ド・フランス、パリ・ダカールラリー、テニスのウィンブルドンなど、良くも悪くもヨーロッパの有閑階級の趣味性が高じたことで文化性が積み上がり、その大会を唯一無二にしているものが少なからずありますが、マスターズもアメリカ大陸においてもそんな価値観を体現しようとしたように見受けられます。

 もちろん実際にはノベルティ販売や世界の放送局への高額な放映権料収入もあり高度にマーケティング化された大会であることもまた事実なわけですが、今後も商業主義とある部分で一線を画すアイデンティティは変えないに違いなく、そんな希少性も大会のブランド価値の更なる向上に貢献しています。

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