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日本の「東大王」型エリートはなぜ海外で通用しないのか? その理由とは (1/4ページ)

 ■英国の名門校が身につけさせるのは「考える癖」

 筆者はイギリスのパブリックスクールのひとつハロウスクールにて2014年から2018年まで、選択科目である日本語を教える教員として勤務した。日本で教育を受けた筆者は、英国の名門校の教育を目の当たりにし、日本との違いの大きさに日々仰天した。

 特に驚いたのは、生徒に「考える癖」がついていることだ。その対象が学問であれ、芸術であれ、スポーツであれ、物事を表面的な理解にとどめず問題意識を持ち、どうしてそうなったか、それは今後どんな影響を及ぼすかなどまで追究する態度が身についている。

 なぜそうした態度が身についているのか。大学出願時に書く「自己推薦書」を例に挙げよう。イギリスでは大学の入学試験願書で「何を学びたいか」が徹底的に問われる。このため、大学で専攻したい学問に感じている興味や魅力を自己推薦書に書く。

 さらにその専攻を学ぶにあたり、自身がどんな資質を備えているかを示す。進路指導担当教員によると、そこで求められる資質は四つにまとめられる。第一に研究を一貫して最後までやり通せる強い精神力。第二に考えを冷静にまとめられる思考力。第三に自分の意見を的確に表現でき他人の意見に耳を傾け問題を解決できるコミュニケーション能力。最後に既成概念にとらわれない独自の思考を持つこと、である。

 ■オックスフォード大学に合格した高校生の自己推薦書

 自己推薦書の実例を見ていこう。これはハロウ校からオックスフォード大学の哲学・政治学・経済学を学ぶ学部(PPE)への進学を希望するミロ君が書いたものの一部だ。冒頭では何を学びたいかと、その学問への興味が生まれた理由が明示される。

 「個人や機関が意思決定をする際に決め手となる哲学・政治・経済的な判断基準は何か?」この答えを探るため、私はPPEで学びたいと考えている。私はイギリス人だがパリで育ち、バイリンガルの学校に通った。学校では歴史を英語とフランス語を学習したおかげで、両国民の見解を学べた。また、各国の生徒たちを学友に持つ多国籍な環境で多種多様な物の見方、価値や政治体制に対して興味が生まれ、これを大学で勉強したいと思うようになった。

 ハロウ校の授業では、知識を詰め込むことより、クラスメートとの議論が重視されている。専門書を読み込むのは授業外での時間だ。学習の成果を世界の事象に照らし合わせて考え、専門家の意見を聞くために政府機関の討論会にも出席する。

 政治哲学への入門として、私は学校で政治権限の本質と正当性について議論した。思考を深めるためにルソーの『社会契約論』を読んで、全体意志とは別の概念である一般意志から正当性が生まれるという考え方を理解した。一例として私は国家の本質と正当性についてIS(イスラム国)と呼ばれる組織を取り巻く問題点と関連付けて考えてみた。国防研究所による討論会に出席した時は、ISが国家として認められる機能をどの程度まで持っているかという議論が印象に残った。歴史の授業では、中東を恣意的に分断したサイクス=ピコ協定について学んだが、これらを考えあわせ、独立国家であることの主張を支えるさまざまな正当性の基盤についてもっと学びたくなった。

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