CAのここだけの話

「日本はなぜそんなに完璧なの?」個性豊か、130カ国のCAと働くということ (1/2ページ)

佐藤麻衣
佐藤麻衣

 SankeiBiz読者のみなさんにだけ客室乗務員(CA)がこっそり教える「ここだけ」の話。第107回は中東系航空会社で乗務10年目の佐藤麻衣がお送りいたします。

初めて会う仲間と力を合わせて、お客様の命を預かる

 中東系航空会社で働く醍醐味の一つは様々な国籍の人たちと出会えることです。南極大陸を除く全ての大陸に就航しているということもあり、利用されるお客様の国籍も採用されるクルーの国籍もそれだけ多くなります。また中東のいくつかの国は外国人労働力に頼っていて、私の住む国でも人口の9割以上は外国人で、世界各国から集まってきた人たちが働いています。

 私の勤務する航空会社ではクルーだけでもその出身国は約130カ国にのぼります。フライトのメンバーは毎回違うので、お客様だけでなくクルーともまさに一期一会。ブリーフィング(フライト前の情報共有のミーティング)の際は名前や国籍、乗務歴などを含む自己紹介が不可欠です。このような環境では常に他者や多文化をリスペクトすること、またステレオタイプを持たないことは大前提です。

 私が入社した当時は約6000人だったクルーもコロナ前までには倍以上に増え、それとともに採用対象となる国籍も格段に増えました。国籍に関係なく世界中どこへでも飛ぶことができるので、フライトで日本人が自分一人というのは日常茶飯事です。

 そんな多国籍で個性的な人たちと世界中を飛び回り、互いに協力して作り上げるフライトは毎回貴重な経験です。しかし、それは、初めて会った同僚を信頼しなくてはお客様の命を預かるという、安全第一の仕事はできないということでもあります。

 このような環境なので、一緒に飛んだクルーとは二度と会えないこともよくあるのです。フライトは毎回出会いの連続で新鮮です。

 そんな中でも特定のクルーと2回連続でフライトしたり、数カ月前に一緒に仕事したクルーと再会したりした時にはとても嬉しくなります。

乗務1年目で乗務したモスクワ便で一緒に仕事したフィリピン人クルーとは、なんとその5年後に成田便で再会し本当に感動しました! 「あの時、一緒にモスクワ観光に出掛けたよね?」と思い出話に花が咲きました。

乗務1年目に出会った、忘れられない言葉

 私はいま、フライト責任者として乗務しています。一期一会の環境では、ポジティブな気持ちで明るく仕事をするのはとても大切です。ブリーフィングでその雰囲気を作りリードするのはフライトの責任者の仕事です。私自身、責任者に就任してから心掛けていることの一つでもあります。

 乗務1年目の時のブリーフィングで忘れられない出来事がありました。ブリーフィングは全員が椅子に座っておこなうのですが、その日のフライト責任者からこんなことを言われたのです。

「客室乗務員として働いていることを誇りに思って。なりたくてもなれない人たちもいるのよ。あなたたちが今座っているその席に座りたい人たちが世界中にどれだけ居るか考えてみて」

 今ある状態や生活を当たり前と思わずに、一日一日を丁寧に常に感謝して過ごすことが大切だと気付かされた瞬間でした。以来、仕事で嫌なことがあった時などに、その言葉を思い出しては「もうちょっと頑張ってみようかな」と自分に言い聞かせ、現在に至ります。

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