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ブラウン 「機能主義」という説得力の方程式 (1/3ページ)

秋月涼佑
秋月涼佑

 いつも感じることなのですが、日本人は機能主義が大好きというか、機能主義に絶対的な信頼を寄せているように感じます。というか広告やマーケティングを業にしていると、しばしばデザインだとかコピーライティングだとか“為にする”作為的な表象など“しゃらくさい”と、初手からまったく理解されない空気に出会うことさえあったりします。有り体に言えば、「チャラチャラしてるんじゃねえ。モノがしっかりしていれば黙ってても売れるんだよ」。という思想とでも申しましょうか。

 やはり日本は資源のない国で、どんな時代も今ある資源を最大限無駄にせずやり繰りしてきた歴史もあるでしょうし、そんな中で鎌倉時代「方丈記」にすでに書かれている簡素な生活志向や、禅の思想、「用の美」を唱えた民藝運動など脈々と、装飾をそぎ落としていった先に残るそのものの本質を意識する文化が根付いたのだと感じます。

 そんなシンプルで機能性にフォーカスした日本製品が、高度成長期以来世界中に歓迎されたのはある意味当然のことでしたし、禅に傾倒したスティーブ・ジョブズがソニーなどメイドインジャパンの製品に大きな影響を受けたこともまた歴史的な事実です。

■日本人にも受け入れやすいドイツ流機能主義

 ところでそんな機能主義志向の日本人にとっても、非常に受け入れやすい製品がドイツ製のプロダクトです。かつて「最善か無か」を標榜し、機能的な裏付けがないディテールが存在しないと言われたメルセデスベンツや、ポルシェなど虚飾を排したスタイルは日本人にも共感されやすいコンセプトだったと言えます。

 さすがに高級車やスポーツカーとなればハードルが高くても、日用品としてデイリーに使うものでドイツ機能主義を感じさせてくれるのはブラウン製品に他なりません。

 そんなブラウンは創業100周年とのことです。

 1921年ドイツ、フランクフルトにほど近いクロンベルクに創業者マックス・ブラウンによって創業された小さな機械工場が源流の会社とのこと。それにしても、これほどに工業デザインを世界的に評価されてきたメーカーは世界広しと言えどもそう多くありません。歴代多くのブラウン製品がニューヨーク近代美術館に永久展示されていることからもその評価は分かります。とにかく、機能主義に徹した、シンプルだが高品質で使いやすいデザインコンセプトは時代や国を超えて支持されてきたのです。

 1919年ドイツに創設され、"機能主義""合理主義"でのちの建築や工業デザインに大きな影響を与えた教育機関バウハウスと創業期の時代が重なることも象徴的と言えるように思います。

 まして人間工学という概念はもはや目新しくもないと考えられていますが、実際にそれを突き詰めた製品だなと恩恵を感じることはそう多くはないように思います。でも実際にシェーバーなどブラウン製品を使うと、少なくとも人間の骨格や皮膚などを研究した上で、例えば「髭をそる」という作用を実現するために、理詰めで突き詰めたんだろうなと感じる部分が多々あります。

(参考)ブラウン「100周年デザインサイト」

 やはり、考え抜かれた機能性を生活の中で体感したときに、そのブランドへの圧倒的信頼感が高まることは言うまでもありません。まして、毎日使う製品であればこそ、その説得力の価値はブランドへの信頼を超えて、ときにリスペクトまで至るのではないでしょうか。その結果がライフスタイル誌などで特集されたり、美術館に収蔵されたりするほどの高い評価だと思います。

 そして自らのブランドアイデンティを広く理解しアピールするために、製品自体が最も雄弁なタッチポイント、生活者接点であることを思い知らされるのです。

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