ローカリゼーションマップ

ある国の事情を知るには 「この人ならば!」という人に聞く事の難しさ (3/3ページ)

安西洋之
安西洋之

 ヴァーチャルでの対話についての不満を述べても仕方がない。肝心なのは土地勘がない文化、いわばアウェイにおいて相手の発言を多角的にみるにはどうすればよいか?である。

 話を聞く相手の数を多くするにも限界がある。確かに母数が少なすぎる話を全体像につなげるのはリスクがあり過ぎる。それならば、「この人なら!」と信頼できる人を数人選んで、ある程度の母数からでてくる意見をフィルターにかけてもらう。

 しかし、そもそも「この人ならば!」と思える人を一瞬にして獲得できると思うのは現実的ではなく、それなりの時間を経てのさまざまな交信のなかで候補として浮かび上がってくる。一つの事象に対する考えだけでなく、分野を超えた話題に対する反応で「この人ならば!」と思えるものである。

 かといって、何十年もの間、つきあったからといって、今のホットな話題に関する数々の意見をフィルターにかけるに最適な人かと問えば、それも違うのだ。時間をかけて友人になったかもしれないが、残念ながら、友人が常にベストな観察者であり解釈者であるとは限らない。

 数か月のつきあいのなかで、多数のテーマに関して意見交換をしたくらいの関係の人が適当だったりする。そういう人をいろいろな国でみつけ関係を保つのは手間がかかるが、ぼくのような立場でこれしか手はないのではないか、と今のところ思っている。

安西洋之(あんざい・ひろゆき)
安西洋之(あんざい・ひろゆき) モバイルクルーズ株式会社代表取締役
De-Tales ltdデイレクター
ミラノと東京を拠点にビジネスプランナーとして活動。異文化理解とデザインを連携させたローカリゼーションマップ主宰。特に、2017年より「意味のイノベーション」のエヴァンゲリスト的活動を行い、ローカリゼーションと「意味のイノベーション」の結合を図っている。書籍に『「メイド・イン・イタリー」はなぜ強いのか?:世界を魅了する<意味>の戦略的デザイン』『イタリアで福島は』『世界の中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』。共著に『デザインの次に来るもの』『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか?世界で売れる商品の異文化対応力』。監修にロベルト・ベルガンティ『突破するデザイン』。
Twitter:@anzaih
note:https://note.mu/anzaih
Instagram:@anzaih
ローカリゼーションマップとは?
異文化市場を短期間で理解すると共に、コンテクストの構築にも貢献するアプローチ。

ローカリゼーションマップ】はイタリア在住歴の長い安西洋之さんが提唱するローカリゼーションマップについて考察する連載コラムです。更新は原則金曜日(第2週は更新なし)。アーカイブはこちら。安西さんはSankeiBizで別のコラム【ミラノの創作系男子たち】も連載中です。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus