今日から使えるロジカルシンキング

ランチェスターが説く「接近戦」の餌食になりやすい人 賢い消費者が子供時代から養う能力 (1/2ページ)

苅野進
苅野進

 学習塾は夏期講習の時期です。夏期講習に通っていないお子さんも、学校ではなく自宅で学ぶ(学ばなくてはならない)時間が多くなります。

 私の教室では、「テキストを読んで出来るところまで理解しようと試みる」作業を重視しています。一般的には、このような予習作業を課してしまうと授業開始時に差が生まれてしまい、授業を進めるのに面倒だということで「予習不要」を謳う教室は少なくありません。通わせる保護者の方も「講師が元気よく、ゼロからわかりやすく説明してくれる」ことに価値を感じることが多いという点も理由でしょう。

 今回は「読んで理解するのは大変だが、上手に説明してもらえるとわかる」という状態に慣れてしまうと少し危険だというお話をしたいと思います。

「接近」への代価やリスク

 「字を読むのは面倒」という意識が強く、「全く同じ内容でも人に読んでもらうとわかる」とか「聞く気になる」という人は少なくありません。大人がそうなのですから、子どもたちを見ればその芽がすでに見えるわけです。教育産業のサービス精神はもちろんですが、指導する講師や保護者もそのような状態なら「そうか、じゃあ説明してあげよう」と対応してくれます。知らずしらずのうちに、世の中には「字で書かれた情報を読み取る」ことが面倒・苦手な人が生み出されているのです。

 ここで、ランチェスター戦略の「接近戦」について説明したいと思います。ランチェスター戦略とは、戦力で劣る「弱者」が戦力で勝る「強者」にどのようにして挑むかを考えた戦略論ですね。

 ランチェスターは「弱者」が採るべき戦略として、大手が出来ないくらい、顧客に接近してビジネスをすべしという「接近戦」の有用性を説明しています。「接近戦」はなぜ有効なのでしょうか? ここに、上記のような「字を読むのは面倒」で「人に読んでもらうとわかる」という層が大きく関わってきます。

 携帯電話、投資商品、保険、自動車などの高額動産は「すでに公開されている情報」を直接説明してもらいたいという要望が少なくありません。

  • 公開情報を読むことができない
  • 公開されている情報では読む気にならない
  • 同じ情報でも人から説明されるとわかる気がする

 このような状態では、大きく分けて2つの点で「接近戦」の餌食になりやすいのです。

  • 人を介することでコストを負担しなければならない

 これは、携帯電話料金において、ドコモショップで対人サービスを利用できるdocomoと、ネットで契約などすべてが済むahamoの利用料が大きく異なることからもわかると思います。

そして、もう1つ、

  • 相手が売りやすいものを売りつけられることがある

 ということです。

支離滅裂な説明を鵜呑みにする生徒も

 バックマージン(仕入先などに支払われる手数料)が大きい商品をなんだかんだと理由をつけて売りつけられることです。

 人が説明しているとなんとなく理解した気になりがちです。私は教壇に立つ時に、時々、子どもたちがぼーっと聞き流してしまわないように引っ掛けの説明をすることがあります。

「この三角形の底辺は10cm、高さは20cmだね。だから面積は10×20×2=400人だね。答えは400人!。わかった? ○○君?」

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