働き方

出勤者7割削減ならず 宣言延長も効果に限界

 新型コロナウイルスによる医療逼迫(ひっぱく)が続く中、19都道府県の緊急事態宣言が13日、延長された。在宅勤務などのテレワークも引き続き求められるが、実施率は伸び悩んでいるのが実態で、やみくもに実施を呼びかける手法の限界も指摘される。職場接種の進展で社員のワクチン接種も進んでおり、感染予防と経済活動を両立させる「ウィズコロナ」の考えに立った新たな働き方も求められる。

 テレワークをめぐっては、8月18、19日に菅義偉(すが・よしひで)首相が、経団連など経済3団体を直々に訪問。出勤者の7割削減へテレワークの徹底を求める異例の要請を行なった。

 だが、東京都が8月のテレワークの実施状況についてサンプル調査をしたところ、個人の実施率は54・3%で、7月の49・4%から微増にとどまった。新型コロナの長期化で、すでに多くの企業が、ぎりぎりまで出勤者を減らしていることも背景にある。ある大手IT企業の担当者は「昨年から8割以上の出社抑制を続けており、首相の要請後も追加の対応は取っていない」と打ち明ける。

 テレワーク率は企業の規模が小さいほど下がる傾向がある。パーソル総合研究所の小林祐児上席主任研究員は「テレワークは1社で実施しようと思っても難しさがある」と指摘する。取引先や顧客から来てほしいといわれれば、立場の弱い中小企業は断れない。

 同研究所が7月30日から8月1日に実施したインターネット調査でも、従業員が10~100人未満の企業のテレワーク率は15・2%だった。全国平均も27・5%で、政府の求めた出勤者の7割削減がいかに高い目標だったかがうかがえる。小林氏は「業界ごとに足並みをそろえるなど工夫が必要だ」との見方を示す。

 一方、新型コロナのワクチン接種が進む中で、テレワークのあり方も変革が求められている。今は多くの企業が無理をして実施しており、生産性を下げているケースも少なくないからだ。しかし、ワクチン接種後のテレワークについて、6割の人が「会社から説明がない」と答えており、方針を決めていない企業も多いとみられる。

 テレワークは育児や介護による離職を予防するほか、東京一極集中を是正し、地方創生にもつながるとされ、政府も新型コロナ前から推進してきた。それだけに、小林氏は「感染が収束していく中でテレワークの取り組みも縮小していくのは大きな損失だ」と話している。(蕎麦谷里志)

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