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最大手のクラフトビール時代 キリン「スプリングバレー豊潤496」 (1/3ページ)

秋月涼佑
秋月涼佑

 緊急事態宣言も解除され、ようやく飲食店でのアルコールを伴う会食も恐る恐ると言え再開できることとなりました。異例の厳しく長かった自粛生活は、我々の生活習慣に根深いインパクトを与えたことは間違いなく、コロナ以前のライフスタイルにすべてがそのまま戻ることは難しいのかもしれません。

 とは言えやはり日本人が営々と築いてきた外食や飲み会の豊穣についてそのまま捨て去るには惜し過ぎると思えてなりません。

 例えば「とりあえず乾杯」で始まる飲み会、その瞬間間違いなくウキウキする高揚感にあふれます。これから始まる打ち解けた会話と美味しい食事、もちろん「乾杯」と言ったからには欠かせないのはお酒です。酒好きはパブロフの犬並みにうれしくなってしまうはずですし、そこまでお酒が得意でない方でも飲み会の雰囲気は嫌いではないよという方も少なからずいらっしゃいます。

 それにしても毎度そんな楽しさの中でも頭の片隅にしみじみ感嘆してしまうのは、「とりあえず乾杯」という言葉はニアリーイコール「とりあえずビール」ということに少なくともここ日本では(もちろん「とりあえず乾杯」が焼酎だったりする楽しい地域もありますが)なっているということであります。飲み会がある度に、最初の一杯は全員が「何にしようかな」と迷う間もなく、というか迷う面倒もなくビールで合意されているというありがたさは誰の発明でしょうか、天才過ぎると言わざるを得ませんが、実際にはビール会社が営々と積み上げてきたマーケティング活動の成果に他なりません。

 日本におけるビール製造販売の草分け麒麟麦酒に至っては1870年(明治3年)の 「スプリング・バレー・ブルワリー(SPRING VALLEY BREWERY)」に源流をもち、変遷を経て1907年(明治40年)に三菱財閥の出資で発足するなど錚々たる歴史があります。その長い歴史の中で、飲食店との二人三脚で、常に新鮮なビールを補充し、時に最適温度でビールを保管できる冷蔵ケースを提供し、最近であれば高性能なビールサーバーも準備するということで、飲食店の利用客にビールを常に美味しく飲んでもらうための細やかな気配りと工夫を凝らしてきたのです。

 マーケティング面でも、キリンのロゴ入りでお店の看板を用意したり、季節折々の衣装を着た女性モデルのポスターなどはかつて風物詩的に飲食店の壁を飾っていました。

 努力があったからこその「とりあえずビール」であったわけですが、エスニック料理を含む飲食業態の多様化や他ならぬ酒造メーカー自身が仕掛けたビール以外のアルコール飲料の販促、糖質オフムーブメントや酒税を含めた相対的なビール価格の上昇など多くの要因が重なり、「ビール離れ」と言われる防衛戦の厳しさが指摘されるようになりました。そんな状況で迎えたコロナ禍でした。

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