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テスラ車で10人が死亡しても一切謝罪せず…イーロン・マスクが超強気を貫く本当の理由 (1/4ページ)

 テスラの「自動運転」の安全性を巡って、アメリカで議論が起きている。2016年以降にオートパイロット稼働中のテスラ車が少なくとも30件の衝突事故を起こし、10人が死亡しているからだ。テスラCEOのイーロン・マスクはこれまで事故について一度も謝罪していない。経営コンサルタントの竹内一正さんは「その姿勢にはイーロンの一貫した哲学がある」という--。

 ■運転支援システムなのに「完全自動運転」のような名称

 今年8月、米運輸省道路交通安全局(NHTSA)は約80万台のテスラ車に関して、運転支援システムの安全性を調査すると発表した。2018年以降に発生した緊急車両を巻き込んだテスラ車の衝突事故が11件に上り、うち1人が死亡したことを受けての対応だった。

 テスラの「オートパイロット」と1万ドル(約110万円)のオプション機能「フル・セルフ・ドライビング(FSD)」はドライバーの監視が必要な「レベル2」に相当する“運転支援システム”だが、名前が完全自動運転であるかのようで紛らわしく、物議を醸していた。

 自動運転はレベル0から5までの6段階で表され、レベル2は、ドライバーは常にハンドルに手を置き、運転状況を監視することが求められる。運転主体はあくまでヒトである。これがレベル3になると主体は人からシステム側に移り、そして、レベル5は完全自動運転となる。

 NHTSAは緊急車両を巻き込んだケース以外でのテスラ車の衝突事故についても調査を行っており、16年以降でオートパイロット稼働中のテスラ車が少なくとも30件の衝突事故を起こしており、これらの事故で10人が死亡したと報道されている。

 テスラのCEOのイーロン・マスクは、度重なる衝突事故が発生しているにもかかわらず、オートパイロット稼働中に起きた事故に対し、一度も謝罪していない。振り返ると、2016年にフロリダ州でオートパイロット稼働中のテスラ車が死亡事故を起こした際は、世間の多くから「オートパイロットを中止しろ」と批判の声が上がった。

 ■「人が運転するより、オートパイロットのほうが安全」と反論

 だが、イーロンは「統計的に米国では1.5億kmの走行で1件の死傷事故が起きている。一方、オートパイロットを使ってテスラユーザーたちが走行した距離は合計約2億km以上で、今回のフロリダの事故が初の死亡事故だ。比較すれば、オートパイロットは人間よりも優れていると判断できる」と主張し、開発の継続を公言した。この発言を受けて世論もテスラ支持に傾いていった。

 「自動運転」と聞くと完璧なものを期待してしまうが、イーロンは「自動運転は、ある種の確率の問題だ」と主張する。人々は自動運転に完璧を期待するのではなく、「人の運転より安全かどうかで考えなくてはいけないんだ」というイーロンの指摘は現実的だ。

 以降、イーロンは事故が起きても「人が運転するより、テスラのオートパイロットのほうが安全だ」との主張をデータを示しながら繰り返してきた。

 だが、テスラ車の販売台数が増えるとともに、自動運転での事故も増加している。なにより、テスラはオンラインでつながっているモデルSやモデル3といった実車を公道で走行させて膨大なデータを収集し、自動運転開発に生かしてきた。公道でテスラユーザーを実験台にするかの手法には根強い批判もある。

 なぜテスラはユーザーを実験台にするようなやり方で開発を進めているのか。そこにはテスラが採用している「ベストエフォート型」と呼ばれる開発手法が関係している。

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