「ビジネス視点」で読み解く農業

儲かる「都市農業」を作らなければ未来が無い 「生産緑地の2022年問題」の現在地 (1/3ページ)

池本博則
池本博則

■「都市農業」の未来を考える

 この連載をお読みいただいているビジネスパーソンのみなさんは「2022年問題」というフレーズをご存じの方も多いと思います。「2022年問題」は、より具体的にいうと「生産緑地の2022年問題」となります。ここ数年「あと〇年で2022年問題を迎える」と特に不動産業界を中心にお話されていたものですが、これは都市にある農地をめぐる問題のことを指します。今回はこちらをテーマにお話しさせていただきます。

■生産緑地とは何か? 2022年問題とは?

 今回のテーマをお話する上でまずは「生産緑地」についてご説明します。生産緑地法が初めて制定されたのは1970年代頃。この頃は日本の成長著しく、そして人口の増加により、東京、大阪を中心とした都市の成長が急速に進み、緑地がどんどん宅地へと転用されることが増えていました。あまりにも急速に市街地の緑地が減少した結果、住環境の悪化や、土地が地盤保持・保水機能を失ったことによる災害等が多発し、重大な社会問題となりました。

 この問題に歯止めをかけるため1972年に制定されたのが、生産緑地法。生産緑地法は、緑地の有する環境機能などを考慮し、農林漁業との調整を図りつつ、良好な都市環境を形成していこうという目的で制定された土地制度でした。こうした打ち手を打っていたものの、進む都市化による土地不足と地価上昇は止まらず、さらに1992年に「生産緑地」と「宅地化農地」を定めることになったのでした。

 緑地の環境機能を維持するために、農地として保存すべき土地は保全する「生産緑地」、宅地への積極的な転用を進めていくための「宅地化農地」の2つに分けることで都市計画において一定の効果を収めたこの制度は、法の改正を重ねながら、現在に至っています。

 各自治体から生産緑地としての指定を受けた土地は、固定資産税が一般農地の水準になり、相続税の納税猶予が与えられるメリットがありますが、終身営農すなわち、ずっとその土地で農業を営むということが条件となっています。土地所有者の死亡などの理由で農業を廃業するか、指定日から30年経過するまでは土地を売りに出すことができないというルールでした。

 この生産緑地の指定は1991年から開始されました。2022年には多くの土地が指定から30年が経過します。そうすると農地には宅地と同水準の高額な固定資産税がかけられるため、  

 土地を手放したいと考える所有者が出てくることが不動産業界を中心に注目されており、特に2022年は全体の8割の生産緑地の指定期限が一気にやってくるため、条件を解除された農地が戸建てやマンション用の土地として大量に売りに出される可能性が懸念されます。これが2022年問題の正体です。

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