コロナ禍は私たちの働き方に変化をもたらした。それにより、コロナ前とは異なる年齢層や内容の契約トラブルが消費生活センターへ寄せられている。
独立行政法人国民生活センターが9月2日、60代以上の人の通信販売でのトラブル相談件数が2020年過去最高になったと発表した。
総務省によると、世帯別ECサイト利用率は50.9%(2020年10月・前年比8.8%増)。20年5月に初めて5割を越えてそれ以降も5割以上で推移している。
また同じく総務省の統計では、19年と比べ20年にECサイト利用が増えたと回答したのは、60、70代が世代別で最も多く52%、全体的に女性のECサイト利用が増えていることがわかる。
高齢者のECサイト利用が増えたのは、外出自粛などで、これまでのリアル店舗での買い物の一部をオンラインショッピングへ切り替えたことが反映されたと思われる。
実際、B to C市場全体のEC化率は8.08%(2020年)、前年比1.32%増、18年から19年は0.54%増なので驚くほど激増したわけではない。
筆者は楽天市場とヤフーショッピングの店舗を運営しているが、両社とも店舗オーナー向けの販促会議で、主要先進国のEC化率は18%ほどあることを挙げ、日本のEC市場は、まだまだ伸びしろがあると強調している。確かに日本市場は、まだ2倍以上の売上が伸ばせる余地がありそうだ。
コロナ禍で「相談できた年齢層」に変化
60代以上の人たちの通販トラブルで相談が増えたのが、消費生活センターだ。消費生活センターは、各市区町村に設置され、国民生活センターと連携してトラブル解決の助言をしてくれるところだ。
都内の消費生活センター担当者に話を聞くと、確かに50、60代の男性の相談が増えたという。その理由として、消費生活センターは平日のみ、受付は午後4時半で終わるセンターが多い。そのため、これまでだと勤務中で相談できなかった人たちが、コロナによって在宅勤務など生活スタイルの変化で、連絡できるようになったからではと話す。
この9月に消費生活センターへ相談し、トラブルを解決してもらったフリーランスSEのTさん(30代男性)は、自宅で契約している光回線の事業者からグループ企業の製品の電話勧誘を受けた。
事業者は日本を代表する大手企業で、グループ企業が提供する総額8万円を超えるスマートホームサービスを1年間契約して解約すれば、会員特典で機材費用をキャッシュバックするキャンペーンだと説明を受ける。
1年分の利用代金およそ2万円で6万円分がキャッシュバックされるので、ぜひ使ってみてほしいとの内容だった。
1度電話を切り、該当のスマートホームサービスを調べ、1年間使って不要だったらメルカリで販売すれば、2万円分くらいは元が取れるだろうと考え、後日の折返し電話で承諾した。
数日後、製品と別に注意事項書類が届く。製品をセットアップして音声でオートロックや家電を遠隔操作でき、先行き不安定なコロナ禍のちょっとした刺激になっていた。
その後、連絡や通知もなく1年3か月が経過した今年9月に1年が過ぎたので、解約の連絡をしたところ、「契約から1年ちょうどの6月中に解約を申し出ないとキャンペーンは適応されない。7月以降は2年契約が自動延長される。注意事項書類にすべて明記してある。今、解約すると機材代金6万円ほど一括支払いとなる」と告げられる。
このまま2年間継続してもほぼ同額かかるので、継続したほうがサービスを受けられるぶん得だ、と言われたそうだ。
落ち度があると思ったが、どうも納得できない…
Tさんは最初に送付されてきた注意事項書類へ目を通した。すると、担当者の説明通りの記載があった。さすがにTさんは自身の確認ミス、落ち度があると思ったが、どうも納得できない。注意事項書類には、「事前通知をする」とあったが、郵便もメールでも連絡がなかった点も気になった。
そこでTさんは、これまで1度も縁はなかった消費生活センターへ相談してみることに。同じような状況になっている人もいるだろう。情報提供になればくらいに考えた。
平日の昼過ぎに電話して簡単にトラブル内容を伝えた。現在、コロナ禍なので、接触機会を最小限にしたいので、該当書類をFAXしてほしいと伝えられる。
「え、FAX?」正直、不安になったTさん。