春節商戦、大衆薬や日用品の爆買いにブレーキ

大阪市内のドラッグストア。春節で中国人観光客は目立つが中国の法施行で買い控えの影響も出ている=5日午後、大阪市中央区(奥清博撮影)
大阪市内のドラッグストア。春節で中国人観光客は目立つが中国の法施行で買い控えの影響も出ている=5日午後、大阪市中央区(奥清博撮影)【拡大】

 中華圏の旧正月・春節の大型連休が始まり、中国人に人気の大衆薬や日用品、化粧品などを置くドラッグストアは多くの買い物客でにぎわっている。ただ、今年は中国での景気減速に加え、1月から電子商取引(EC)を規制する法律が施行され、日本でまとめ買いした商品を転売しにくくなっていることから、従来のような“爆買い”は減ると予想されている。メーカー各社は営業活動を強化。中国や台湾出身の営業部員らが各店を訪れるなど、てこ入れを図る。(安田奈緒美)

 数十店舗以上のドラッグストアが軒を連ねる大阪市中央区の心斎橋。店先には「新春」「免税店」などの看板が掲げられ、呼び込みの声が響いた。

 大幸薬品は春節に合わせ、中国人が好む金色のパッケージの「正露丸」を限定発売した。医薬品事業の海外売り上げの9割以上を中華圏で占めることから、「春節で中国人観光客にアピールし、ブランドイメージ向上や需要拡大を狙う」(同社広報)という。ロート製薬も訪日客に人気の化粧品販売で、中国語表示の商品説明を増やすなどして販売強化を図る。

 「今年の春節は『中国電子商取引法』の施行から初めてのビッグイベント。訪日客向け売り上げに、新法がどれほど影響するのか見極めたい」。大衆薬メーカーの関係者はこう語る。

 中国電子商取引法では、ECの事業者に対して登録や納税を義務づけている。昨夏成立し、すでに日本にも影響が出始めている。これまで納税をせずにネット転売を目的に日本で大量に購入していた一部の業者が購入をやめ、在庫調整を行い、撤退した動きもあるからだ。

 2月4日に平成30年12月期連結決算を発表した日用品大手の花王は、紙おむつのメリーズが転売減少などの影響により「中国向けで苦戦している」と発表した。

 小林製薬も、30年12月期の訪日客への売上高が推計100億円を突破したものの、小林章浩社長は「訪日客向けは年明けから前年割れしている。電子商取引法の影響が出てきている」と明かす。同社は訪日客需要の確保のため、今年1月、「インバウンド戦略推進グループ」を設置。春節に入ってからも中国や台湾出身の営業部員らが各店を訪問して営業を強化しつつ、売り上げの分析を中国本土での販売戦略に生かそうと試みている。

 「今年の春節は、電子商取引法の影響や空港チェックの厳格化で例年みられたような日用品、化粧品の爆買いに影響がでるのではないか」と話すのは、みずほ証券の佐藤和佳子シニアアナリスト。「これまでの中国ECは転売業者が口コミをしてくれ、日本のメーカーは宣伝をしなくても訪日客向け売り上げを伸ばすことができたが、新法の施行で口コミが減ることが考えられる。今後は各社自身のマーケティング力や技術力がより問われることになる」と指摘している。