□ワールド・ワイズ・ジャパン代表LOGOSプロジェクト主幹 濱口理佳
射幸性の大幅な抑制にRSNの支援強化と相談体制の充実、さらに各店舗へのアドバイザーの配置や自己申告・家族申告プログラムの導入など、さまざまな依存対策に取り組みながら、ぱちんこという大衆娯楽を次世代に継承すべく、時代に適した変化を模索する遊技業界。世の中の価値観や時代のニーズに呼応して変わる姿勢は、大衆の暮らしに根差す娯楽として当たり前のスタンスなのかもしれない。
さて、「大衆」を冠する娯楽には、ぱちんこの他に「大衆演劇」もある。この娯楽がいま、新たなブームを巻き起こしつつある。マスコミ報道によれば、大衆演劇の観劇料は1500~5000円だが2000円前後が多く、役者の若返りによりアイドル化が進むなか、若い女性ファンが増え、劇団には「神7(かみセブン)」と呼ばれる一座もあるという。基本的にステージの構成はショーと芝居の2本~3本立てだが、ショーでは若者に人気の曲が歌われ、Jポップを背景に激しいダンスが披露される。かつてメイン客層であった高齢の男性客が減る背景で、仕事帰りのOLをはじめとする幅広い年齢層の大人の女性客、さらに部活帰りの女子高生も観劇に訪れるなか、日替わりで演目が変わることもあり毎日訪れるファンもいるらしい。加えて、訪日外国人客もツアーの一環で劇場を訪れ、日本独自の大衆文化に熱狂するそうだ。
昭和初期には全国に約600の劇場ができるほど人気を博した大衆演劇は、テレビが家庭に普及した頃から人気が衰退。いまや50にまでその劇場数は減ったものの、平成も終わりを迎えようとしているいま、新時代を担う役者たちの存在とファンとの距離の近さを武器に、ファンの裾野を広げるあらゆる努力の結果、エンターテインメントの1つとして新たな客層を獲得しながら人気を回復させている。
では、同じく「大衆」を冠する娯楽として、パチンコ・パチスロはどのような変化を遂げていくのか。時代に左右されないパチンコ・パチスロ固有の面白さや楽しさを携えながら、いかに大衆に寄り添っていくのか。その本質を捉えたアプローチが求められている。
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【プロフィル】濱口理佳
はまぐち・りか 関西大学大学院文学研究科哲学専修博士課程前期課程修了。学生時代に朝日新聞でコラムニストデビュー。「インテリジェンスの提供」をコアにワールド・ワイズ・ジャパンを設立。2011年、有志と“LOGOSプロジェクト”を立ち上げた。