裸になった美人写真家 一瞬でパンツ脱ぎ捨て、少数民族の“仲間”に

 
スリ族にメークを施してもらうヨシダナギさん=エチオピア

 顔や体を色鮮やかにペインティングし、草花をアクセサリーとしてまとう-。そんな“世界一ファッショナブルな民族”、エチオピアのスリ族に光をあてた写真集「SURI COLLECTION」が話題を呼んでいる。アフリカの少数民族を撮り続けるヨシダナギさん(30)。自らも裸になって相手の懐に飛び込むという大胆な撮影スタイルと相まって、いま注目の写真家が、アフリカの知られざる魅力を伝える。(横山由紀子)

 「大人になったらアフリカ人になる」の夢叶え

 石灰岩や赤土などを水に溶かした白や黄や赤のメイクが褐色の肌に映え、草花や木の実などの天然のリースや王冠が顔や頭を華やかに飾る。そして、モデルのようなポーズ。写真集に収められているスリ族の姿は、彼らが結婚式や満月の夜のダンスパーティーでのみ披露する特別な装いだ。

 「まるで森の妖精みたいでしょう。身近な草花をこんなに美しくまとう民族は見たことがありません。最高の被写体です」とヨシダさんは言う。

 アフリカに魅せられたのは、5歳のとき。テレビで見たマサイ族の褐色の肌、色鮮やかな原色の衣装に目を奪われ、「大人になったら、アフリカ人のようになる」と誓った。「自分も同じ肌の色を選べると本気で信じていた」。だが、10歳のときに母親から「あなたは日本人だから、彼らみたいにはなれない」と告げられ、「人生初の挫折」を味わった。

 中学時代にはいじめがきっかけで不登校になり、ひきこもりも経験したが、アフリカへの熱い思いは変わらなかった。グラビアアイドルやイラストレーターなどの仕事を経て2009年、ついに、憧れの地を踏んだ。幼い頃から思い描いていた通り、彼らは格好良かった。その魅力を伝えたいと独学で写真を学び、エチオピアのムルシ族、マリのドゴン族、カメルーンのコマ族などの少数民族を撮影し、ブログで公開すると注目を集めるようになった。

 「わしの5番目の妻になれ」まさかのプロポーズも

 現地では風呂もトイレもないテント生活で、40度の高熱を出したこともある。「彼らとなかなか心の距離を埋められない」と悩んだ時期もあったが、「言葉が通じない彼らと仲良くなれる方法は、同じご飯を食べて、同じ格好になる」ことで乗り越えた。

 自ら裸になる撮影スタイルは、カメルーンのコマ族を撮影していた時に確立した。脱ぎたいという意思を伝えると、長老の4人の妻たちに着替えを手伝ってもらうことになった。「脱げるものなら脱いでみなさいよ」と言わんばかりの妻たちの前で服を脱ぎ、パンツに手をかけようとしたところ、ストップがかかった。気を使ってくれていると感じたが、「どうしても脱ぎたい」と伝え、一瞬でパンツを脱ぎ捨てた。

 すると、それまで無表情だった妻たちは歌を歌い出し、葉っぱをパンツ代わりにしたヨシダさんを大喜びで歓迎してくれた。長老からは、「気に入った。わしの5番目の妻として迎えたい」とまさかのプロポーズも。

 ナミビアでは、ダマラ族の女性たちと同じように、裸になって革の腰巻きを巻いた。女性たちと一緒に記念撮影をしようとすると、後ろに立った女性から、「ナギのおっぱい、小ぶり」と触られてびっくり。一同、大爆笑の渦に巻き込まれたという。

 原始的な美しさ、ヒーローのような格好良さ…世界一おしゃれな民族

 スリ族との出会いは2013年。エチオピア南西部に暮らす彼らの存在を知る人は同国人でも少なく、接触までに2年を要した。首都アディスアベバから車で悪路を3日間走り続け、やっとたどり着いたときには、足はマシンガンで撃たれたようにダニにかまれた痕だらけだった。そこでも自然の流れで服を脱ぎ、彼らと同じ衣装を身につけ、化粧をしてもらうことで、仲間と認めてもらえた。「世界一おしゃれな民族の彼らから、ファッションは自分の心を表現するための楽しいものだと教えてもらった」と笑顔で語る。

 アフリカに魅せられ四半世紀。貧困、紛争、HIVなど負のイメージでとらえられがちなアフリカだが、ヨシダさんはこう訴える。

 「太陽のように笑う人たちの魅力といったらない。アフリカへの偏見を抱いている人が減り、一人でも多くの日本人がアフリカに興味を持ち足を踏み入れてくれることを心の底から願っている。彼らの原始的な美しさ、ヒーローのような格好良さをぜひ知ってほしい」

 よしだ・なぎ 1986年、東京都生まれ。幼少期からアフリカへのあこがれを抱き、2009年に単身渡航、少数民族の撮影を始める。近年は、テレビや雑誌、トークショーなどにも活動の幅を広げる。著書に写真集「SURI COLLECTION」(いろは出版)、紀行本「ヨシダ、裸でアフリカをゆく」(扶桑社)。