ヘルスケア

不必要な「抗菌薬使用」削減が課題 薬剤耐性菌による死者が年間8千人以上

 薬の効かない薬剤耐性菌による国内の死者が年間8千人以上に上ることが5日、明らかになった。耐性菌拡大の原因となる不必要な抗生物質(抗菌薬)の使用が蔓(まん)延(えん)しており、被害を食い止めるために国レベルでの削減策が求められている。

 抗菌薬は細菌の増殖を止めたり、殺したりするのに有効だが、ウイルスが原因の風邪やインフルエンザを治せない。だが、外来診療の現場では、患者の希望を優先し、抗菌薬を安易に出す医師も少なくない。

 政府が平成28年にまとめた耐性菌対策の行動計画では、抗菌薬の使用量を令和2(2020)年度までに、平成25年度より3分の2に減らすとしているが、昨年の使用量は25年比で10・6%減にとどまる。内閣府が今年公表した世論調査でも、抗菌薬の効能を正しく理解している人は約4割だった。

 不必要な抗菌薬を繰り返し服用することで細菌が耐性を持つほか、医師の指示した量や期間を守らずに服用を途中で止めた場合にも殺しきれなかった細菌が耐性化する。抗菌薬で簡単に治療できた中耳炎などの病気が治りにくくなる例も、報告されている。

 家畜の飼料添加物として抗菌薬が利用されていることと、耐性菌拡大との関連性も指摘される。東北大の賀(か)来(く)満夫名誉教授(感染症学)は「耐性菌への感染は当たり前のように起きていると考えられる。耐性菌を保有してしまった人への対処法なども含め、総合的な対策を早急に構築する必要がある」と指摘している。

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