先週の外国為替市場は、米国の追加経済対策への思惑に振り回される展開となりました。序盤にトランプ大統領が追加経済対策に関して、大統領選挙後まで協議を行わないように指示したと報じられると、株式市場が下落し、為替相場でもリスク回避色が強まり、安全資産とされる円や米ドルが比較的強い推移となりました。しかし、その後、追加経済対策の合意に向けて歩み寄りを見せたことを受けて、リスク回避の巻き戻しの動きが強まり、今度は円、米ドルが弱い推移となりました。
今週もこの米国の追加経済対策に関する報道に一喜一憂する可能性が考えられるため、最新の報道に注意が必要となりそうです。
また、英国とEUの通商協議の行方にも注目が集まります。今のところ、漁業権等に関しての溝が埋まらないまま、英国側が主張する交渉の期限が迫っていますが、どちらかが歩み寄りを見せるか、期限到来後も交渉を続けるのか等の交渉に関しての報道により、ポンドを中心に不安定な推移となる可能性があるため、最新の報道に注意が必要となりそうです。
ドル円はもう一段の下押し余地もあり
では、世界中に顧客を持つ外国為替証拠金取引(FX)会社のOANDA(オアンダ)が提供するオーダーブックで外国為替市場の動向を探ってみましょう。
オーダーブックはOANDAの顧客の取引状況を公開したデータです。顧客の保有しているポジションの取得価格の水準(縦軸)と割合(横軸)を示す「オープンポジション」と、顧客の未約定の注文の価格水準(縦軸)と割合(横軸)を示す「オープンオーダー」の2種類のデータから成ります。
ちなみに、ある通貨を買っている状態を「買いポジション」、売っている状態を「売りポジション」といいます。買いポジションを保有している場合、その通貨の価格が取得価格から上昇したら収益が上がり、逆に下落すると損失が発生します。売りポジションを保有している場合は、取得価格から下落すると収益が上がり、上昇すると損失が発生します。FXでは、それぞれのポジションとは反対の売買を行って決済(損益の確定)をする仕組みとなっているからです。
先週のドル円は底堅く、一時1米ドル=106円台に乗せる動きとなりましたが、伸び悩み、週末にかけては少し下落する動きとなりました。
OANDAのオープンポジションを見ると、買いポジションの比率が6割程度と高い中、直近の下押しにより、含み損を抱えた買いポジションが増えており、上昇したところでは、安堵の利益確定の売りが上値を圧迫し、安値を切り下げる動きとなると、損切り(損失拡大を防ぐための決済取引)の売り注文が増え、下落を後押しすることが想定され、上値の重い状況が続く可能性を見出すことができます。
このため、直近では底堅い推移が続いていますが、短期的にはもう一段の下押しの可能性も想定しながら、方向感を探っていきたいところです。
ユーロドルは上昇余地あり
先週のユーロドルは、上昇基調が続き1ユーロ=1.18米ドル台に乗せる動きとなりました。
OANDAのオープンポジションを見ると、売りポジションの比率が6割を超える中、上昇基調が続いたことにより、含み損を抱えた売りポジションが増えています。
このため、下押しした水準では安堵の利益確定の買い戻し、高値を切り上げる動きとなると、損切りの買いが増え、底堅い状態が続く可能性を見出すことができます。
ポンドドルはもう一段の上昇余地も
先週のポンドドルは底堅く、週末に9月中旬からの上値を抑えている1ポンド=1.3米ドルの水準を上抜ける動きとなりました。
OANDAのオープンポジションを見ると、売買の偏りは少ないものの、ユーロドル同様に上昇により、含み損を抱えた売りポジションが増えており、下押しした水準では安堵の利益確定の買い、高値を切り上げる動きとなると、損切りの買いが増え、上昇を後押しし、底堅い推移が続く可能性を見出すことができそうです。
【OANDAのオーダーブック】
オープンポジションはここに注目!
相場を動かす要因の一つは損切り注文といっても過言ではありません。
これ以上損失を増やしたくないトレーダーは保有しているポジションの反対売買を行い、損失を確定させ、市場から退出します。
例えば、価格が下落する局面では、買いポジションの保有者が苦しくなり、損切り注文(決済の売り注文)が出やすくなり、下落圧力が強まる要因となります。
損切り注文は価格の向かう方向と同じ方向へ力が加わる注文となるため、損切り注文が多くでる場面では、短期間に相場が大きく動きやすくなります。
オープンポジションを見ると、どの水準に含み損を抱えたポジションが多いかを視覚的にチェックすることができ、次にどちらに動いた方が、価格の動きが大きくなりそうか(損切り注文が多く出そうか)を予想することができます。
オープンオーダーはここに注目!
前述の通り、損切り注文が増えると、一方向への力が強まるため、価格の動きが勢いづくことがあります。
オープンオーダーを見ると、どの水準にどの程度の注文(オーダー)が入っているかを視覚的に素早くチェックすることができます。
損切り注文が多く入っている水準に到達すると、価格が短期的にでも勢いづくことがあるため、注意が必要です。
世界中のトレーダーの相場分析のサマリー?
トレーダーが損切り注文を入れる水準は、通常は、チャートで相場分析を行なった上で、「この水準を超えてしまったら、相場の流れが逆方向に向かう」と考えた水準に入れます。
OANDAのオープンオーダーは、世界中のトレーダーが相場分析を行った結果のサマリーと言っても過言ではありません。
これを見れば、世界中のトレーダーがどの水準に注目し、相場の転換点となると考えたかを簡単にチェックできます。
※逆指値注文:現在の水準よりも不利な水準を指定して行う注文。通常、損切り注文はこの逆指値注文を使います。
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