主張

医療事故で送検 男児死亡の真相解明せよ

 亡くなった男児は、3歳の誕生日を目前にしていた。かわいい盛りである。両親の悲しみがどれほどのものだったか、想像を絶する。しかも医師からは「簡単な手術で、すぐ治ります」と説明を受けていたという。

 何が起きたのか。遺族が真相の究明を求めるのは当然である。だが事故から6年8カ月を経ても病院側の納得できる説明はなく、民事訴訟ではあやふやな主張ばかりを聞かされてきた。

 男児は平成26年2月、東京女子医大病院で顎にできた腫瘍を除去する手術を受けた。術後に集中治療室(ICU)に移され、鎮静剤「プロポフォール」を投与されたが容体が急変し、死亡した。鎮静剤についても「安全な薬」と説明を受けていた。

 警視庁は21日、業務上過失致死容疑で担当の麻酔科医6人の起訴を求める「厳重処分」の意見を付けて書類送検した。東京地検の刑事処分を経て、刑事裁判の法廷が男児死亡の真相、真実を解明する場となることを望みたい。

 個人での大病院との係争は負担が大きく、民事訴訟における患者側の勝訴は困難とされる。

 捜査にも医療の専門性や手術室の密室性などが壁として立ちはだかる。加えて医療界には、刑事の介入は医療の萎縮を招くとする反発がある。

 男児に投与された「プロポフォール」は、厚生労働省が添付文書で投与を行わない対象を示す「禁忌」項目にICU治療下での人工呼吸中の小児を明記するよう指示していた。ただ法律上の罰則規定はなく、使用は医師の判断に委ねられていたとして、使用そのものを過失に問うことは難しかった。警視庁は投与後の容体の急変に医師らが適切な対処を怠ったとして立件に踏み切った。

 男児の家族は、送検された麻酔科医だけではなく、耳鼻咽喉科の主治医と執刀医にも損害賠償を求めて東京地裁に提訴している。

 術後の容体変化に対応できなかったのは全体を管理するチェック体制に問題があったのであり、主治医らの責任についても引き続き捜査してほしい。

 医療事故の報道についてはかねて、捜査情報と被害者の感情に偏りすぎるとの批判もあると聞く。公平を旨とするのは当然だが、被害感情に寄り添い、これを知らしめることも重要な責務である。

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