教育・子育て

電子マネーのお年玉に保護者の間で賛否が真っ二つ 肯定5割、実行派は1割

 お年玉を電子マネーで渡すのはありか。新型コロナウイルス感染拡大で帰省を見送る人が多い中、正月の伝統をめぐって議論がかわされている。感染リスク軽減や便利さから肯定派は5割にのぼるが、実行に移すのは1割との調査結果も。識者は「いまは過渡期。文化や風習について考える機会にするべきだ」と言う。(石橋明日佳)

 「祖父母宅へ行けるか分からず、いとこに直接会えないかもしれない。お年玉をどのように渡すか迷っている」。大阪府泉佐野市の女性会社員(27)が困惑した表情を浮かべた。

 年始は祖父母宅を訪れ、いとこら6人にお年玉を手渡すのが恒例だ。しかしコロナの影響で親族の集まりが中止となるかもしれない。「電子マネーで渡すのもありだが、スマートフォンを持っている高校生しか喜ばないだろう。直接手渡して喜ぶ顔がみたい」と打ち明けた。

 東京に単身赴任中の男性会社員(47)は、年末年始に家族のもとへ帰るのを断念。娘2人へのお年玉は電子決済サービスで贈ることを決めた。男性は「離れているから、お金を贈ることで年が明けた喜びを共有できると思う」と話す。

 電子マネー事業者の期待感は膨らむ。電子決済アプリ「LINE Pay(ラインペイ)」の担当者は「非接触のため、送る側も受け取る側も安心して利用いただける」。新札やポチ袋を用意する必要もないなどのメリットもあげ、「相手にメッセージやスタンプで思いを伝えることもできる」と強調した。送金・決済アプリ「pring(プリン)」の担当者は「少額でもいいので、コミュニケーションの一つとして利用してほしい」と話した。

 お年玉の電子マネー化について、保護者の間では賛否が真っ二つにわかれる。マネースクールの日本ファイナンシャルアカデミー(東京)が11月、子供を持つ300人にお年玉のキャッシュレス化について行った意識調査によると、51%が肯定的、49%が否定的だった。肯定派は「支払いが便利」「非接触のため感染リスクを軽減できる」といった理由をあげ、否定派には「お金のありがたみや価値が分からない」「情緒がない」という意見が目立った。

 ただ「実際にキャッシュレスでお年玉を送る」との回答は約1割で、現金派(約7割)との差は大きい。電子マネーでお年玉をもらう子供は、まだまだ少数派にとどまりそうだ。

 電子決済サービスに詳しい近畿大経営学部の鞆(とも)大輔教授は「受け取る側の小中学生の間で、スマホがそこまで普及していないためでは」と理由を分析。現金の信頼が高い日本でキャッシュレス化が進まない事情も影響しているとした。その上で「新型コロナもあり、お年玉に限らずさまざまなサービスがキャッシュレスの過渡期にある。最新技術を取り入れつつ、文化や風習を残す方法について考える機会になれば」と話した。

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