大変革期のモビリティ業界を読む

報道を鵜呑みにするな 課題は“耐久性”…自動運転の礎を築くAI運行バス (2/2ページ)

楠田悦子
楠田悦子

 日本がちょうどいい環境かも

 今回のみなとみらいの実証実験は、日産とNTTドコモによるものだが、両者ともそれ以外の企業と連携をしないのかというと、そうではない。日産はNTTドコモ以外と組む可能性もあり、NTTドコモは日産以外と組む可能性がある。

 自社の自動運転車両を持って行けばどこでもできるかというとそうでもない。その地域でユーザーをしっかり持っていて、メンテナンスやオペレーションができるパートナーである必要がある。同社は日本以外にも、アメリカ、イギリス、中国でも自動運転に取り組んでいる。

 NTTドコモとしても、AI運行バスを展開していく地域で、相性のよい企業であれば、日産にこだわらず組んでいきたい考えだ。

 このように商用の自動運転サービスでは、リージョンバイリージョンの考え方に基づいている。

 自動運転の展開のしやすさについて、日本は規制が多く、実証実験には不向きとのイメージがある。日産の技術担当者に聞くと「実は日本の環境も悪くない。日本がちょうどいいかもしれない」と意外な返答が返ってきた。

 その理由は、日本は国が定めた共通の交通法規があり、保安基準ある。一方、アメリカは、交通法規は州ごとに異なり、保安基準については自社で基準を設ける必要があり、事故が発生した際の責任などを考えると、設定が難しい。中国は国主導で予測がつかないため、開発がしにくいのだそうだ。

 AI運行バスでの実用化

 自動運転を用いたAI運行バスはいつ実用化されるのか。明確な目標年を定めることは難しそうであった。そう遠くはないが、来年、再来年ではなさそうだ。しかし、試乗や取材を通じて、国のロードマップを念頭に置きながら、自動運転車の量産や市場投入を目指して、着々と進めていると体感できた。

 したがって、ドコモのAI運行バスなどのモビリティサービスの普及が自動運転のベースを築き、法律や技術的な問題が解消された時に、すぐさま自動運転が導入されていく未来を実感した。

 このように、自動運転に関するニュースが飛び込んできたとき、報道を鵜呑みにせずに、「本当にそうか?」と問いかけながら読んでみることを勧めたい。

心豊かな暮らしと社会のための移動手段・サービスの高度化・多様化と環境を考える活動に取り組む。自動車新聞社のモビリティビジネス専門誌「LIGARE」創刊編集長を経て、2013年に独立。国土交通省のMaaS関連データ検討会、自転車の活用推進に向けた有識者会議、SIP第2期自動運転ピアレビュー委員会などの委員を歴任。編著に「移動貧困社会からの脱却:免許返納問題で生まれる新たなモビリティ・マーケット」。

【大変革期のモビリティ業界を読む】はモビリティジャーナリストの楠田悦子さんがグローバルな視点で取材し、心豊かな暮らしと社会の実現を軸に価値観の変遷や生活者の潜在ニーズを発掘するコラムです。ビジネス戦略やサービス・技術、制度・政策などに役立つ情報を発信します。更新は原則第4月曜日。アーカイブはこちら

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