国内

20年春闘 危機感すれ違い浮き彫り

 今回の労使トップ会談の成果は両者がデフレの20年間で日本の賃金水準が国際的に低下した現実を受け止め、賃上げの勢いを維持する必要性で一致したことだ。一方、経団連と連合の危機感のすれ違いも浮き彫りになった。経団連は雇用形態を変えていかないとデジタル社会で生き残れないとの危機感がある。連合は、中小企業と大企業、正規社員と非正規社員の間で広がった格差の是正を強調する。

 経団連は今年の春闘指針で日本型雇用の見直しを問題提起した。自動車などのメーカーや商社は国内市場が縮小する中、海外市場に活路を求める。今や連結従業員の多くが外国人で多国籍チームを束ねないと経営が成り立たず、既に日本型雇用の見直しは始まっている。付加価値の高いサービスを生み出すには、人工知能(AI)など職務に応じた専門性の高い人材を通年で採用する「ジョブ型」制度も必要で、これまでの「メンバーシップ型(新卒一括採用)」に加え、ジョブ型が活躍できる複線型の方向性も打ち出した。

 だが、連合の優先事項は格差是正で、雇用の流動化を急ぐ動きには警戒感も示す。企業が一定期間採用を手控え、非正規雇用が急増した就職氷河期問題の二の舞にならないよう、国も巻き込んだ安全網の必要性を提言している。

 また経団連は、企業ごとの課題も違い、業界横並びの集団的賃金交渉が「実態にあわなくなっている」とも訴える。実際に横並び回答が慣例だった電機連合もベア回答の格差を例外的に容認する考えを示す。今後、業界の垣根が崩れれば、産別交渉の意味合いが変わる可能性もある。(上原すみ子)

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