大阪市議会で7日、大阪府立大学と大阪市立大学を統合し、令和4年春に新大学を開学する議案が提案された。統合構想は少子化で大学進学者が減る中、熾烈(しれつ)な大学間競争を勝ち抜くための府市一体の戦略だ。令和4年度の開学を見込む新大学は、自治体のビッグデータに近い公立大の強みを生かし、高齢化など都市問題に関するシンクタンクも兼ねる「知の拠点」を目指す。国内外から学生や研究者を呼び込むコンテンツを提供し、統合の「相乗効果」を生み出せるかが問われる。
「世界から若い研究者が集まる大学、大阪の経済成長を生み出せる大学になると思う」
大阪市の松井一郎市長は6日の記者会見で、大学統合の意義についてこう強調した。少子化を念頭に「日本の若者は減る。これからの社会構造の変化に耐え得る教育機関にしていく」とも述べた。
少子化は大学にも切実な問題だ。文部科学相の諮問機関の中央教育審議会は、令和22(2040)年の大学進学者を51万人と推計。ピークだった平成29(2017)年の63万人から約2割減少する計算になる。大学の連携や統合が進み、昨年5月には1つの国立大学法人が複数校を運営できるよう関連法が改正された。
府市は統合により経営効率化とともに、教育・研究レベルを発展させて新大学の価値を高めたい考えだ。
府市と両大学の運営法人が作成した基本構想によると、新大学は両大学の重複分野を集約し1学域・11学部・15研究科に再編。人工知能(AI)など最先端技術が定着する将来を見据え、情報分析の専門人材を育成する情報学研究科を大学院に創設する。
産官学の連携も強化し、創薬分野で製薬会社や大規模病院と共同研究を行うほか、行政データも活用していく方針だ。
新大学のキャンパス整備は府市両議会での統合議案可決後に本格化する。構想では、メインキャンパスを大阪城近くの森之宮地区に設け、府大中百舌鳥(なかもず)キャンパス(堺市中区)と市大杉本キャンパス(大阪市住吉区)は縮小する方向が示されており、整備費は約1千億円に上る。
府市は新大学の関連経費の負担について折半を基本としつつ、民間資金の導入や令和7年度廃止を見込む府大羽曳野キャンパス(羽曳野市)の売却益などを充てて公費割合を縮減する方針だ。ただ関連経費が確定せず、負担額は読めない。ある自民市議は「費用の詳細が分からない段階で、統合に賛成しろというのはあまりに急だ」と話した。