国内

対コロナ、シャープOB挑む 光触媒使い感染抑制 ベンチャー存在感

 シャープOBらで設立されたベンチャー企業、カルテック(大阪市)が、光触媒を活用して空気中のウイルスや臭いなどを抑制する空間除菌脱臭機に取り組んでいる。開発技術が飛沫(ひまつ)粒子に含まれた新型コロナウイルスの感染力を抑制することも分かり、「オンリーワン」技術で大手がひしめく市場に攻め込む。関西では大手メーカーとの競合市場に参入するベンチャーが目立ち始めており、ものづくり活性化の起爆剤として注目される。

 プラズマ優先で発起

 「ウィズコロナの中で、安心安全に暮らせる商品を創出していきたい」

 カルテックの染井潤一社長は10月15日、光触媒を活用した独自技術の実証実験で新型コロナの感染力を抑制する効果を発表した記者会見で力を込めた。

 実証実験は理化学研究所、日本大医学部と共同で実施した。新型コロナウイルスを含む飛沫粒子が入った密閉容器内でカルテックの空間除菌脱臭機と同程度の性能を持つ光触媒を搭載した装置を作動させると、ウイルスは約6分で90%、約20分で検出不可能なレベルまで抑制することを確認したという。

 光触媒は光を当てると吸着したウイルスや悪臭成分を分解する物質で、酸化チタンが代表。汚れ防止や抗菌の目的でさまざまな製品に使用されている。

 カルテックの除菌脱臭機はフィルターに酸化チタンを塗布。フィルター表面は特殊な加工で微細な構造になっており、1センチ四方あたりの表面積はテニスコート1面相当(約200平方メートル)と酸化チタンをより多く塗布できるという。

 染井氏は徳島大大学院で光触媒の理論を学び1986年、シャープに入社。衛星通信やLED照明、IoT(モノのインターネット)センサーなどの技術開発に携わってきた。

 光触媒を活用した製品開発を提案したものの、プラズマ放電を使って空気中の菌やウイルスなどの作用を抑える独自技術「プラズマクラスター」が優先された。環境や食品衛生の分野に光触媒を生かそうと一念発起、2018年に退社し、カルテックを起業した。

 理念に賛同した仲間が集い、現在の社員27人中、シャープOBは16人。これまでに壁掛けタイプや首掛けタイプなどの空間除菌脱臭機を発売し12月に大型の据え置きタイプを発売する。

 新型コロナ禍に伴って空気の質への関心が高まる中、パナソニックやシャープ、ダイキン工業などの家電・空調大手では、家庭用エアコンや空気清浄機などの売り上げが好調だ。活況にわく市場に、カルテックは独自技術で大手に挑む。

 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの山本雄一朗ディレクターは「換気や空気清浄機などの感染対策をアピールする飲食店などが増えており、今後は事業者向けの製品でも需要が高まる」と指摘する。

 カルテックの空間除菌脱臭機も売り上げが4~9月で約14億円と好調で、21年9月期の売り上げ目標は海外展開も視野に100億円以上を掲げる。染井氏は「新型コロナへの効果を訴求できるよう製品で医療機器の認証取得も目指す」と意気込む。

 技術力で大手に対抗

 関西では大手メーカーとの競合市場に参入する「ものづくりベンチャー」の存在感が高まっている。

 次世代モビリティー(移動機器)ベンチャーのグラフィット(和歌山市)はペダル付き電動バイクを開発。京都大発ベンチャーのフロスフィア(京都市)は半導体デバイスの高機能化に取り組む。いずれも大手がひしめく市場に独自技術で挑む。

 ベンチャー企業の情報発信や経営支援のため、産官学で06年7月に設立した「関西ベンチャーサポーターズ会議」の調査によると、関西に拠点を置くベンチャー企業は約1200社。業種別でみると、今年の調査に回答した424社のうち、製造業が39.9%とトップで、2位の情報通信業(13.4%)を引き離した。

 製造業が多いのは、家電や電子部品産業が集積していることや、大学発ベンチャーの起業が活発であることが背景にあるようだ。同会議は、投資家に関西のベンチャー企業情報を発信するなどしてサポートする。

 同会議事務局の近畿経済産業局創業・経営支援課は「大手メーカーの元社員や大学発のベンチャーが多く、技術力がある。新型コロナ禍でも柔軟な経営判断で業績を戻したり伸ばしたりしているところもあり、関西ベンチャー企業の活気を発信していきたい」としている。(山本考志)

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