生かせ!知財ビジネス

動き始めたIPランドスケープ推進協議会

 日本企業の知財部門における情報分析活動が企業活動の表舞台に出てきた。1月に設立が公表されていたIPランドスケープ(IPL)推進協議会(東京都千代田区、知的財産研究教育財団内)が3月18日に第1回協議会をオンライン方式で開き、活動を開始した。会員は現時点で、IPLを推進している企業28社(幹事企業9社、会員企業19社)。オブザーバーには特許庁に加えて、経済産業省、内閣府知的財産戦略推進事務局が就いた。

 第1回協議会は糟谷敏秀特許庁長官から支援メッセージが届けられた後、参加各社がIPLの取組状況を発表した。今後、各社から寄せられたIPL推進での課題を絞り込み、解決策構築へ向けて会員間で研究・論議し、情報共有を図っていく。また、行政・関係組織や業界団体などへ情報提供や提言を行い、IPL定着を進める。

 IPLとは、知財分析の高度化による知財部門の事業・経営戦略への参画のことだ。成否のカギは社内の関係性や意識を変えることにあるようだ。

 協議会をサポートする杉光一成氏(KIT虎ノ門大学院/知的財産研究教育財団)は「(IPLは)知財部門が事業・経営へ分析結果を渡して終わりではない。できる限り、双方向のやりとりがあることが重要」だと言う。

 知財部門は一般に、指示を受けて動く。企業は通常、経営・事業部門の作る戦略に合わせ、研究開発を行い、必要な特許を出願する。この時、知財部門は特許化の可能性や障害となる他社特許を把握し、事業や研究開発、投資の動向や方向性を測るため、特許情報分析を行う。

 しかしIPLでは企業の戦略策定に知財部門自ら関与していく。当然、その意識が問われる。協議会の発起人代表である川名弘志氏(KDDI)は「従来は特許分析を基にした事業戦略解析みたいなことをして、他社が優れているとか当社が勝っているとか議論した。IPLでは将来の展望や立案、提案も行う。知財部門は事業戦略をもっと自分のこと化して、踏み込んだ提案が求められる」と説明する。データは特許情報以外もさまざま探っている。

 もう1人の発起人代表、中村栄氏(旭化成)は「どうすれば経営者に気づきを与えられるかを想像して分析し、結果を提供していくことが大切になる。知財部門は中立的に分析し、たとえ現状の戦略を否定するような分析結果が出ても(報告相手に)忖度(そんたく)してはいけない。受け手側も分析結果を中立的な目で見て判定していく、そういう関係であることが理想だ」としている。

 次の協議会は5月27日、7月27日の予定。会員募集は継続する。(知財情報&戦略システム 中岡浩)

 ■IPランドスケープを定義する3要素

 1 事業戦略または経営(全社)戦略の立案に向けた分析である

 2 事業・経営情報に知財情報を組み込んだ分析(現状の俯瞰(ふかん)、将来展望など)である

 3 事業責任者・経営者などと共有される(双方向でのやりとりがある)

  ※IPランドスケープ推進協議会の発表資料を基に作成

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