海外情勢

米共和党「トランプ党」ますます色濃く 盾突いた下院ナンバー3解任   

 【ワシントン=黒瀬悦成】米共和党の下院議員団は12日に会合を開き、トランプ前大統領と対立するリズ・チェイニー議員(54)を下院共和党ナンバー3のポストである下院共和党会議議長から解任した。来年の中間選挙で民主党から多数派奪還を目指す下院共和党が、同党の支持層から高い人気を維持するトランプ氏の意向に最大限に配慮したもので、同党が今後、「トランプ党」の色合いを一層強めていくのは確実とみられる。

 チェイニー氏は今月初旬、トランプ氏が昨年の米大統領選の敗北を認めず、「不正によって(勝利を)盗まれた」といまなお主張しているのを「大嘘を拡散する行為だ」と批判し、同氏の怒りを買っていた。

 この日の会合では、開始直後にチェイニー氏の解任決議が出され、出席者の発声投票で同氏の下院指導部からの「追放」が決まった。関係者によると解任に異議を唱えた議員はいなかったという。

 同氏の後任には、親トランプ派のエリス・ステファニク議員(36)が週内に選出される見通し。

 チェイニー氏は会合後、記者団に「私たちは真実に従い前進すべきだ。大嘘と憲法を同時に容認することはできない」と訴えた。

 また、「前大統領をホワイトハウスから遠ざけることに全力を挙げる」とし、トランプ氏の大統領選への再出馬の阻止に向け、党内の反トランプ勢力を率いていく構えを強調した。

 対するトランプ氏は声明で「チェイニーは非情で最低の人物だ。彼女が共和党にとって害悪であることを実感した」と罵倒した。

 トランプ氏は、来年の中間選挙の共和党予備選でチェイニー氏の対抗馬を支持し、同氏を完全に放逐するとも表明している。

 チェイニー氏は、1月の連邦議会議事堂襲撃事件を受けたトランプ氏の弾劾訴追決議で他の共和党議員9人とともに賛成票を投じた。親トランプ派議員は翌月、今回と同様に同氏の解任を求めたが、この時は大多数の議員が同氏の議長留任を支持していた。

 今回は風向きが変わったのは、トランプ氏が党内で自身に盾突く議員らに徹底的に報復する姿勢を強め、ほとんどの共和党議員が保身のため同氏に同調する道を選んだためだ。

 しかし、生粋の保守派として知られるチェイニー氏を追放することには保守派の間で批判も強い。

 米紙ウォールストリート・ジャーナルは社説で「チェイニー氏は正しい。選挙は盗まれていない」と指摘し、共和党が大統領選に関するトランプ氏の「大嘘」を掲げて来年の中間選挙に臨んだ場合、勝敗の行方を左右する無党派層に見放され、下院の奪還は見込めないだろうと警告した。

     ◇

 リズ・チェイニー氏 息子ブッシュ元政権で副大統領を務めたディック・チェイニー氏の長女。国務次官補代理などを経て、2017年から西部ワイオミング州選出の下院議員。新保守主義(ネオコン)の立場からトランプ氏の外交政策を批判してきた。

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