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国民投票法改正、3年空費 CM規制で折り合わず

 国民投票法の改正は、憲法改正の賛否を問う投票の利便性を高めるもので与野党とも異論は少ないにもかかわらず、提出から成立まで3年の歳月を空費した。今回の改正内容と直接関係のない国民投票運動時のCM規制の議論の進め方で与野党が折り合わなかったことと、野党が改憲議論を具体化させたくないという2つの要因がある。

 改正案は平成30年6月に与党などが提出。同12月、衆院憲法審査会幹事懇談会で日本民間放送連盟(民放連)がCM量の自主規制を行わない考えを表明したことが審議に影響した。

 野党は「賛否両派の資金力の差によって国民投票に不公平が生じる」と反発。翌年の令和元年5月、旧国民民主党がCM規制などを盛り込んだ独自の改正案を提出し、野党側は改正案と独自案の並行審議を求めた。一方、自民党側は審議入り済みの改正案の先行処理を主張した。

 当時、衆院憲法審の与野党の筆頭幹事の日程協議では「並行審議でなくても、次にCM規制を議論すると確約されるなら野党は採決に応じる」と今回とほぼ同じ認識を一時共有した。しかし、立憲民主党の枝野幸男代表が現行法はCM量の自主規制を前提に制定され、自主規制しないなら「欠陥法だ」とそもそも論を主張。現行法制定に関わった自身の参考人質疑実施にこだわった。与党側は「遅延戦術」とみて参考人質疑を認めず協議は行き詰まった。

 野党側としては与党の進め方に問題があったとの立場で、旧国民で独自改正案を提出した立民の奥野総一郎衆院憲法審幹事は「最初から並行審議をしていれば、改正案はとっくに成立していた」と指摘する。

 当時の旧立民は平成29年の衆院選で野党第一党に躍進した党だ。旧民進党分裂後、9条を含む改憲議論を進めると公約した新党・希望の党を嫌って流れてきた左派支持層に支えられた。改正案審議の停滞は、改憲議論を具体化させない防波堤の狙いもあったが、昨年9月の新・立民結成により議論に前向きな議員が増加。さらに衆院選が近づき「これ以上採決を拒み続ければ立民を支持する保守層が離れる」(幹部)と判断し、採決に応じる姿勢に転換した。(田中一世)

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