海外情勢

英国で都市封鎖の解除延期 1回の接種ではインド株感染防ぎきれず

 【ロンドン=板東和正】英政府は新型コロナウイルスのインド変異株の感染拡大を受け、21日に計画していたイングランドの都市封鎖(ロックダウン)の規制解除を7月19日に約1カ月延期した。英国ではワクチン接種が先行しているが、国民の約4割が2回目の接種を終えておらず、感染力の強いインド株への警戒を強めている。

 英政府は当初、今月21日にバーやレストランの人数制限を解除し、娯楽施設の営業を解禁する方針だった。英メディアによると、規制緩和の延期による英国の飲食業界の売上損失は約30億ポンド(約4600億円)に上ると推計される。

 ロンドン中心部でレストランを経営する男性(39)は20日、産経新聞に「新型コロナ禍で低迷していた経営を立て直す計画を見直さざるを得なくなった。規制解除を見越し、従業員を増員する予定だったが見送った」と話した。

 英政府が規制解除を先延ばしにしたのは、感染が広がるインド株に対応するため、延期期間を活用して多くの国民に2回目のワクチン接種を実施するためだ。

 英イングランド公衆衛生庁によると、米製薬大手ファイザーのワクチンを2回接種すると、インド株に対し、約88%の予防効果がある。しかし、1回だけでは約36%の効果しかない。英製薬大手アストラゼネカのワクチンも1回の接種は2回に比べ、効果が約30%落ちる。

 英国では成人の約8割が1回目の接種を受けたが、2回接種した人は約6割にとどまる。

 感染症の英専門家は「1回だけの接種ではインド株の発症を防ぐことは難しく、2回目の接種を終えていない国民を中心に感染が広がってしまった」とみる。

 インド株は英国の新規感染者数の約9割を占め、全体の新規感染数も増加している。今月1日に約3300人だった一日あたりの新規感染者数は、19日に約1万人となり3倍以上に膨れ上がった。

 英政府は延期期間中、1回目と2回目の接種間隔を12週間から8週間に短縮し、2回接種した人口を増やす考えだ。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus