海外情勢

香港紙「親中」が一色に 蘋果日報休刊で

 中国政府に批判的な唯一の香港の大手紙、蘋果(ひんか)日報(アップルデイリー)が24日付を最後に休刊したことは、香港から民主派に寄り添う大手メディアが消滅したことを意味する。高度の自治を認めた「一国二制度」で言論や報道の自由が保障されてきた香港。自由な言論が認められない中国本土と異なり、過去には同紙以外にも当局批判を行うメディアは複数あった。

 だが2020年6月に香港国家安全維持法(国安法)が施行され、メディアをめぐる状況は一変した。同年8月に同社創業者、黎智英(れい・ちえい=ジミー・ライ)氏が同法違反容疑で逮捕されたのを機に、報道への弾圧は日増しに強まっていく。

 今年4月には、中立的で知られる公共放送「香港電台」(RTHK)の番組制作者が、事件関係車両のナンバー照会をめぐり有罪判決を受けた。メディア経験のない公務員出身者がトップに送り込まれ、番組が次々と“検閲”を受けて放映中止に追い込まれた。

 中立的とされてきた大手紙「明報」も近年、政府寄りの報道が続く。24日付の社説でも蘋果日報の休刊を淡々と報じつつ、「香港の選択肢は一つしかない。国の側に立ち、発展に溶け込んでいくことだ」と政府寄りの視点を掲載した。

 一方、他の大手メディアには中国資本が浸透。2年前の香港記者協会の調査では、主要メディアの半数以上が中国の影響下にあるとした。英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」は中国のネット大手アリババ集団が保有し、大手紙「星島日報」も中国系が筆頭株主を務めている。

 現在、こうした「親中」勢力が業界の多数を占め、蘋果日報などの報道を「フェイクニュースだ」と相次いで非難する。民主派に近いネットメディア「立場新聞」なども批判の的となっており、今後も当局の意に沿わない報道機関が弾圧されるリスクは続きそうだ。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus